NaCl条件下におけるイチジクの生育反応
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概要
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塩類条件下におけるイチジクの生育反応を明らかにするため,以下の2つの実験を行なった。'ホワイトゼノア'において,生育期間中に,0, 50, 100, 150, 200mM NaClを24週間連続して与えた。その結果,新梢伸長はNaClの濃度が高くなるほどより強く抑制された。50及び100mM区では花芽が形成され,それらの多くは果実へと発達していった。葉中のクロロフィル含量はNaCl処理で一時的に増加したが,その後は低下し,0mM区より少なくなった。NaCl処理によって葉に多量のNaが蓄積した。生育期間中は枯死や葉における障害は発生しなかった。しかし,冬季に200mM区ですべての個体が枯死し,翌春にはすべてのNaCl処理をした個体で萌芽しなかった。萌芽前の茎や根には多量のNaとClが蓄積していた。1989年から1992年にかけて'マスイドーフィン'及び'ホウライシ'において,毎年1回ずつ生育期間中に50mM NaCl処理を6及び12週間行なった。1989年はNaCl処理は両品種の新柄生長を抑制した。6週間処理区では,処理終了後に両品種とも生長は盛んになり,対照区と同じ程度にまで回復した。'マスイドーフィン'では12週間処理区でも生長は回復したが,'ホウライシ'では回復しなかった。1990年には'マスイドーフィン'における6週間処理区においてのみ処理後に生長が回復した。1991年には対照区も含めたいずれの処理区においても新柄生長が抑制された。果実形成は,1989及び1991年にはNaCl処理で促進されたが,1990年は対照区で促進された。3年間における果実総数は6週間NaCl処理で多くなる傾向が見られた。これらの結果から,イチジクはかなり耐塩性の強いことが示されたが,長期間塩類条件下で生育させると翌年の生長に悪影響の出ることが明らかになった。更に,短期間でも連年塩類下に置かれると,次第に生長が衰えていくことも示唆された。低濃度のNaClは花芽分化を促進させたが,その結果については今後の検討が必要である。
- 近畿大学の論文
- 1995-03-15
著者
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