経営者支配の意味(III) : 会社組織と官僚制
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概要
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会社組織も官僚制にほかならないというのが当該学問分野の研究者の定説である。しかし、本稿は、官僚制は国家という共同観念の組織者の団体であるのにたいして、会社組織は資本を機能させ利潤をあげることを目的とする団体であって、両者はまったく別のものであると理解する。官僚制は国家という共同観念の単なる組織者の団体であるから、その本質はいわゆる僧侶共同体(マルクス)といいうるものであって、それゆえに自己目的的団体もしくは自己維持団体であり、秘密主義、権威主義、形式主義にとらわれている団体である、ということになる。これにたいして、会社組織は資本を機能させることを目的とする団体であるから、その本質は資本家としての団体であり、いわばエゴイスト共同体とでもいえるものであって、それゆえに分権主義、反秘密主義、反権威主義、反形式主義を特徴とする団体であるということができる。そしてそうであるとすれば、官僚制が規則従属的で横ならび的勤労が跋扈し、それゆえに怠惰な組織であるのにたいして、会社組織はその反対に自由で創造性にとみかつ勤勉であって、官僚制よりはるかに緊張感に満ちた組織であるということになる。会社組織は近代的個人主義を基礎としてその上に構築された団体であるゆえに、その構成員は官僚制や近世以前のどんな団体よりも社会身分的にはるかに対等であり、経済的にも市民社会の成員よりも相対的にいちじるしく平等であるといえるが、今日の市民社会はこのような会社成員によってうめつくされる社会となっているから、今日の市民社会はかっての市民社会よりもすぐれて、したがって近世以前のどんな社会よりもはるかに差別や隷従のすくない社会である、ということができる。
- 摂南大学の論文
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