経営者支配の意味(II) : 取締役会の形骸化
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概要
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会社は営利活動のために出資したひとびとの団体であるが,株式会社の本質は人格の結合体というより無数の資本の結合体というというところにある。株式会社は資本の結合体というべきものであるために,会社の専門の経営機関として取締役会がぜひとも設けられる必要があるということになる。したがって,株式会社の取締役会は資本の意志の実行機関として,本源的には会社の大株主たちによって構成されたのであり,今日においても零細な株式会社においては株主によってその席が占められている。しかし,会社の規模が巨大化して,どんな株主も会社にたいしてその影響力をふるうことができないようになれば,ここに会社は株主から自立することになり,経営者支配が成立する。経営者支配の下では,取締役会は会社経営者によって事実上任命され,ふつう会社の上級管理職従業員が充用される。このような取締役は,当該会社の利益と特別な結合関係にあるから,会社の内外の事情に精通しているとともに精魂こめて勤務するという利点をもつが,他方においてはたぶんに会社経営者に追従し,彼の独走を阻止できないという欠陥をかくせない。取締役会の形骸化である。そこで,経営者の独走を阻止し,のぞましい会社統治を実現するにはどうすればよいかという議論が発生し,これが近年流行のコーポレイト・ガバナンス論にほかならない。このコーポレイト・ガバナンス論においてはさまざまな提案がなされているが,本稿の立場は,会社間の競争を強化して,一方では会社経営者が不断により大きな会社利益と,したがってより大きな会社資本と関係し,一定の会社資本と同一的に結合することがないようにするとともに,他方においては取締役,いな会社従業員一般の自立性を高め,優秀な資本機能者たらざるをえなくすればよい,というものである。
- 摂南大学の論文
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