在来禾穀類における生育特性と栽培様式との対応に関する研究 : 第4報アワとシコクビエの分げつ性比較

概要

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禾本科雑穀類の直播及び移植適応性を明らかにする目的で,主としてアワとシコクビエを対象に1976年から1981年にかけて分げつ能力に関する圃場実験とオーキシン(IAA)関連の分析実験を行い以下の結果を得た。1.現地で直接採集した在来種44系統の分げつ能力は分けつ数からみて少ばつ型(アワ,モロコシ),多ばつ型(シコクビエ),中間型(ヒエ,キビ)に類型化できた。2.分げつ能力が環境要因によってどの程度変化しうるかを知るため,アワとシコクビエについて栽植密度と施肥量を変えて生育比較を行ったところ,シコクビエは疎植と多肥により分げつ数は著しく増加した。他方,アワは密度,施肥量に関係なく分げつはほとんどみられなかった。このことから両作物の分げつ能力差はそれぞれ固有の遺伝的特性によるものと判断された。3.分げつ能力が生じる原因をオーキシンとの関連から検討し,次の点を明確化した。1)アワとシコクビエの幼苗はTIBA (2,3,5-triiodide benzoic acid) 1,000ppm溶液の注入処理により,いずれも分げつ増加が認められた。2)生物検定により内生IAA量を比較した結果,アワの酸性分画でフリーオーキシンがシコクビエより多く認められた。3)IAA酸化酵素活性の比較では,同酵素によるIAA破壊程度はシコクビエの方がアワよりも速かった。アワのIAA破壊速度が遅い理由の一つとして,IAA酸化酵素阻害物質の存在が透析により示唆された。以上の結果,アワとシコクビエにおける分げつ能力差は,少なくとも幼苗を対象とする限り,IAA酸化酵素活性の大小とIAA酸化酵素阻害物質の存在の有無によって,体内IAAの濃度が影響されるためと考えられる。同時にこのことがアワ-直播栽培(個体数で穂数確保),シコクビエ-移植栽培(分げつ数で穂数確保)の対応が成立する根拠の一つとなっている。
岐阜大学の論文
1987-01-10

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