1930年代の電機企業にみる重工業企業集団形成と軍需進出 : 小平浪平と鮎川義介の戦時経済下の企業者行動と戦略
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概要
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満州重工業育成に全力を挙げる日産財閥は,国内企業集団については自動車工業経営をのぞき,再編と集約化による効率的運用を極力すすめた。この再編劇において最も重要な役割を演じた日立製作所が,日中戦争の拡大に対応して軍需化を意思決定し,また結果的に重工業企業集団を形成した過程を考察するのが,本稿の課題といえる。戦時経済のなかで軍需増産が叫ばれたのは当然であり,これに呼応して鮎川義介は日産自動車と東京自動車工業の合併を計画し,小平浪平は日立製作所と東京瓦斯電気工業の合併を進める。この東京自動車工業と東京瓦斯電気工業の両企業は,当時国内の代表的軍需企業であった。しかし,誰しも軍事力強化につながると考えた二つの合併劇は,結局,軍の介入により挫折させられた。この考察によって,新興財閥は一般に軍部の協力を無条件かつ有利に得ていたと言われるが,必ずしもそうとは言い切れなかった事実を明らかにしていきたい。なお資料の中心は日立製作所所蔵の未刊行,外部未発表の草稿,ノート,メモランダムである。一方的な見解に陥らないために批判,検討をくわえて用いたが,本文で扱う軍と商工省の行動は非公式におこなわれたことであり,また東京瓦斯電工側の内部資料に乏しかったことなど,資料的に制約されたことを断っておきたい。
- 慶應義塾大学の論文
- 1996-04-25
著者
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