現代企業の社会的責任の範囲に関する試論 : 現代企業の営利的側面と社会的側面の関係に注目して
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概要
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従来より,企業の社会的責任論では,企業は社会的責任を果たすべきか否かについて論じられてきた。社会的な活動によって企業の利潤は減少してしまうから企業は社会的活動を遂行すべきではないとする立場と,社会的な活動によって企業利潤は増大するのであるから企業は積極的に社会的活動を遂行すべきであるとする立場とが対立していたのである。しかしながら,社会的活動の実行が,常に企業利潤の減少を招くと考えることは不適切である。この点を,サンクション・メカニズムの観点から明らかにしていく。現代の経済社会では,社会的活動の遂行によって利潤が減少してしまう場合もあれば,むしろ企業の営利的な側面を大いに刺激しうる場合も存在している。企業の営利的側面と社会的側面が両立しているような局面では,企業は自主的に社会的活動を遂行しようとすると考えられる。企業が自主的に社会的活動を遂行しようとする範囲とは,どのような範囲なのであろうか。この疑問に回答を用意することこそ,社会的責任論としての論究課題なのである。本稿では,上述の論究課題に対する最も初歩的な視点を提供している。企業の目的を利潤極大化と仮定したうえで,企業が自主的に社会的活動を遂行する範囲のみを現代企業の社会的責任の範囲とする。企業が自主的には遂行しないと考えられる社会的活動に関しては,むしろ,政府の役割が強調される。
- 慶應義塾大学の論文
- 1997-04-25
著者
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