国際民事証拠共助の基本理論について
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概要
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「国際民事証拠共助」とは、「民事裁判における証拠に関する国際司法共助」のことをいう。人の国際的な活動が活発化すると、裁判において証人となるべき者や検証の目的物が、外国に所在するという事態も起こる。このとき、証拠の所在する外国の同意なくそこでわが国の裁判官等が証拠調べを行うことは、その国の主権を侵害することになる。そこで、外国に嘱託して証拠調べを行ってもらったり、逆に、外国からの要請を受託して証拠調べを実施したりする特殊な国家間の協力が必要になってくる。従来この分野は、国際民事訴訟法学において「国際司法共助」の名の下に、外国における訴状の送達等の問題と共に論じられるのが一般であった。しかし、近時の条約や生じた問題を見てみると、各共助問題はそれぞれ独立の様相を呈してきている。特に証拠の共助はそうである。本稿は、このような問題意識に基づき、送達等の他の問題から区別して論じられるべき内実をすでに有していると言える「証拠共助」を検討の対象とするものである。検討の角度としては、理論的側面からのものに的を絞り、条文解釈的注釈は他の論稿に譲る。古くから各国の実務に存在するが用語としてはまだ使い慣らされていない国際民事証拠共助について、あくまで概念や基本原則などを明らかにするのが本稿の目的である。
- 熊本大学の論文
- 1999-03-25
著者
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