教授行動に影響を及ぼす二要因についての考察(1) : 机間巡視において獲得される情報と児童特性の分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
従来,行われてきた授業分析は,主として教師と子どもの相互交渉を文字化した,いわゆるT-C型の授業記録こよってなされることがほとんどであった。そこには,ある授業時間中の言語情報のやりとりが記録され,児童がその中でどのような発言をしたのか,また,教師はそれに対していかなる対応をしたのかがデータとして蓄積されている。しかし,こういった文字記録を検討するだけでは,発話として表れない言動や行動の詳細,例えば,机間巡視中・グループ別学習といった際の両者間のやりとりや,ある行動を教師がとったときの心理的背景・意図までは把握しきれない。本研究の目的は,こういった課題に対する一つの試みとして刺激回想記録を用いて実際の授業を分析し,T-C型の授業記録には表れにくい教師の言動や,その背景にある教師の隠れた意図を明らかにすることにある。そのため,まず本稿では教師の意思決定という観点からこれまで行われてきた諸研究を概観し,そこにみられる問題点についての整理を行う。その上で,机間巡視において獲得される情報と教師が把握する児童特性という2つの要因に関して,実際の事例を分析する際の課題と方法論について述べる。It is now common that classroom instructions are analyzed based on the so-called T-C type instructional records in which interactions between children and their teachers are expressed in words. The records contain data showing how they interacted through language, that is, what children said and how teachers responded to it. Such an instructional analysis, however, cannot capture details of their activities that are beyond words. We, thus, cannot recognize children's activities that teachers notice through observing individuals or group work, or what teachers' intention/psychological background to give a particular course of instruction is. The purpose of the present study is to analyze classroom instructions based on stimulus recall records and reveal teachers' activities and intentions behind them that are hardly captured by means of the T-C type instructional records. First of all, we will review previous studies from the viewpoint of teachers' decision-making and point out some problems. Furthermore, focusing on the two factors of information that teachers obtain through individual attention and child characteristics, we will present a methodology which will clarify some problems and enhance analysis of cases.
- 上越教育大学の論文
著者
関連論文
- 学習者相互におけるコミュニケーション過程の分析 : 発話間の関係描出に基づく発話者の傾向把握
- 学習者相互のコミュニケーション過程の分析 : 談話分析による量的な第一次分析を中心として
- 「ちょっと立ち止まって」の授業研究(I) : 第5〜7段落の教育修辞学的考察(自由研究発表)
- 教授行動に影響を及ぼす二要因についての考察(2) : 机間巡視及び児童特性(二要因)に関する特徴的傾向と典型的意思決定場面の分析
- 説明的文章教材の「限定」・「反証」条件分析の試み : 「小さな労働者」を対象として
- 意見の表出過程における対立点の提示と認知の変容(国語科授業研究の課題と方法)
- 予想外応答場面における教師の暗黙的信念 : 教師の内に隠れた教授と学習の理論
- 教授行動に影響を及ぼす二要因についての考察(1) : 机間巡視において獲得される情報と児童特性の分析