木下竹次の教育論 : 家庭科教育史上における木下の技術教育論
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概要
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木下竹次は初期論文において,当時の技能教授が知識教授と同様にヘルバルト派の五段階教授法によって行われていたことを批判し,革新の必要を説いた。技能は知識と異なり,人間固有の発表性に基づいて行われるから,教授法も違わなければならないという考えによる。すなわち木下はこの時期にすでに技能のもつ能動的特質に着目していたのである。このことが「学習法」理論を完成する基礎であったと理解できる。技術教育革新の対象として木下は最も技術性が明確で,最も遅れていた裁縫科に着目した。自ら裁縫技術を習得し,これに教育理論を結びつけて確立したのが『裁縫新教授法』である。その中心は,裁縫技術の根底をなす人間の発表性に基づく「裁縫心」という新概念を取り入れ,裁縫教育の芯に据えたことである。裁縫心は自ら努力して裁縫生活を発展させようとする心と実践である。したがって裁縫教育の目標は裁縫心を発展させることである。その方法は,教師による指導の徹底と学習者の反復による習熟が基本であり,この考えは『新裁縫学習法』においても貫かれた。習熟を重視する理由は,学習者が生涯的に自らの生活を建設していける学力を身につけさせることにあった。裁縫教育理論を確立した木下は,これを基に「技術教育汎論」を世に問うた。そのねらいは単に技術教科だけでなく,すべての教科の一部をなしている技術への反映を企図したものであり,画期的な学習理論であった。
- 奈良女子大学の論文
著者
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