<研究会報告>コンピュータを用いた自由回答のコーディング
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概要
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本稿は,自由回答データを数量的なデータとして分析することで,コンピュータ・コーディングの有用性を示すものである。あらかじめ選択肢をもうけることが難しい探索的な調査においては,自由回答法を用いることは,有効な方法の1つである。しかし,自由回答を人手によってコーディングすることは,信頼性が乏しく,あまり用いられてこなかった。本稿では,パソコン上で動くAUTOCODEプログラムによって,宗教教団真如苑の霊能者618人の信仰における,その時々の修行の目的である「取り組み」の内容を自由に記述してもらったものをコーディングした。コーディングは,語に相当するような比較的短い文字列を単位とし,490の文字列を抽出し,それらをまとめて45のコードを作成した。その中で重要な15のコードについて,コードの共起をジャッカードの類似性測度によって表し,信仰の初期の段階と信仰の深まった段階での違いを比較した。その結果,初期の段階では,民俗宗教心に基づく図を描くことができ,信仰の深まった段階では,民俗宗教心に基づいてはいるが,さらに真如苑の教えに関わるコードが複数結びつく複雑な図になることが明らかになった。さらに,ALSCALによって,信仰の深まった段階における15コード間の共起を二次元の図に表した。この図はそれだけでは,その宗教を信じていない者が宗教世界を見た場合と同じく,解釈し,理解することが困難である。しかし,信仰の初期の段階に明瞭に現れた民俗宗教心をモデルとして解釈すると,霊能というとらえがたい世界が,宗教の外部にいる研究者にとっても理解可能なものとなることを示した。本稿のコーディングは,短い文字列を単位とした細かいもので,人手によって正確にコーディングすることは不可能である。この分析は,コンピュータ・コーディングによってはじめて可能となったものである。
- 札幌学院大学の論文
- 2001-01-22
著者
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