落語「長屋の花見」のユーモアとフレーム分析
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概要
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フレーム理論とは, 人工知能, 心理学, 言語学などの分野で近年研究が盛んになった概念である.人間の行動における認識の枠組みとでもいうべきもので, 「予想の力」などと言われることもある.言語学では, 談話分析に応用されることが多い.小稿では, この理論を用いて落語を談話としてとらえ, そのユーモアが生じる過程を分析することを目的とする.「長屋の花見」は, 大家が貧乏長屋の店子を連れて花見に出かけるというだけの単純なストーリーからなるが, きわめてクスグリ(笑いを起こさせるための手法)に富んだ落語である.その笑いの多くは, 大家と店子との対話から生まれる.それは, それぞれの持つフレームの対立によってもたらされる.すなわち, 金持ち/貧乏, 生/死, ごちそう/粗食, などの対立するフレームがそこから取り出される,その食い違いが笑いの誘因とデなっている.それらをまとめると, この落語は正常と異常の7レームの対立を軸としていることがわかる.そして, 特に<有り得る/有り得ない>という対立が全体を通して存在する.大家は<有り得る>世界の代表者であり, 店子はしばしば<有り得ない>世界に飛び出してしまう.そこに対立が生まれ, ユーモアが生じることになる.このような方法は, そのほかの落語の分析にも有効だと考えられる.
- 早稲田大学の論文
- 1996-03-31
著者
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野村 雅昭
早稲田大学
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野村 雅昭
早稲田大学日本語研究教育センター
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Patricia Welch
ミシガン大学大学院文学研究科博士課程
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Patricia Welch
ミシガン大学大学院文学研究科博士課程:早稲田大学日本語研究教育センター
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Nomura Masaaki
ミシガン大学大学院文学研究科博士課程
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- 落語「長屋の花見」のユーモアとフレーム分析
- 田中章夫著, 『近代日本語の文法と表現』, 2001年1月30日発行, 明治書院刊, A5判, 792ページ, 24,000円 / 田中章夫著, 『近代日本語の語彙と語法』, 2002年9月20日発行, 東京堂出版刊, A5判, 514ページ, 12,000円
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