経済的自由について (西村孝夫教授還暦記念号)
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概要
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今日,ハイエクおよびフリードマンを中心とするいわゆる新自由主義思想の唱導者達は,インフレーションと失業の併存という資本主義経済の長期的病幣をめぐり,その原因を国家財政の肥大化と非効率化に求め,それ故に,これを導いたケインズ政策の破綻を宣言する。また,そのような病理学的診断をもって,彼らは,自由主義経済体制本来の姿として,資本主義経済に深く入り込んでいる国家干渉を排除し,国家をして経済的自由を保障するためにのみ機能せしめよと力説する。かかる新自由主義は,かつての自由経済のスローガン「自由放任」を要求するものではなく,人々が市場の指標にもとづいて行動することを可能ならしめるよう,法によって維持された「開かれた社会」における制度としての自由の確立を要求する。いうまでもなく,彼らの批判の直接の対象となっているのは,いわゆるケインズ派の人達によって構成し直されたケインズ経済学すなわちアメリカの新古典派的総合の立場に立つケインズ派経済学による財政偏重のケインズ政策であって,ケインズ自身のものではない。それにもかかわらず,新自由主義思想は,制度的自由の確立を妨げるものとしてケインズ自身の経済学やその考え方とも対立するもののごとく思われる。そこで,本稿では,ケインズ理論と経済的自由との関連,そして,また,われわれが求めるべき資本主義経済における経済的自由とは何か,について論じようと思う。
- 大阪府立大学の論文
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