黒麹菌のナリンジ分解酵素の生成機作(I)
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概要
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夏柑苦味ナリンジンを加水分解して脱苦味する酵素ナリンジナーゼの給源を糸状菌にもとめ, 自然界より分離した糸状菌のうち, クロカビおよびアオカビの数株に可成り強くナリンジナーゼを分泌する株を見出し, 特にナリンジナーゼとともに類似酵素と見做されるヘスペリジナーゼをも最も強く分泌し得るクロカビの1菌株(これを供試菌とした)を検索し得て, この供試菌によるナリンジナーゼ生成条件を検討した.この菌のナリンジナーゼ生成は, 培地にその基質であるナリンジンの存在を必要とすることが認められ, グルコース5%, ポリペプトン3%に無機塩若干を配合して, これにナリンジンの0.05%を添加した培地を用いて, その生成条件を検討した.窒素源としては, 無機態窒素よりも有機態窒素が優れており, 酵素生成に好適な条件においては, 培養基のpH値, 炭素源と窒素の量比などほゞ酷似しているにかゝわらず, たゞ酵素分泌量が著るしく異ることから, 有機態窒素の有効性は生酸性の抑制のみが原因とは考えられない.また炭素源については, 単独では配糖体あるいは天然物(夏みかん果皮, 大豆粕など)を除いた糖類では, ラムノースのみが特に著るしいものであり, またグルコースを炭素源とした場合, これに少量添加したラムノースが酵素生成を著るしく増大することを認めた.この事実は, グルコースを炭素源として,生育した菌体が, 共存するラムノースによって酵素生成を誘導されたものと推察される.さらにナリンジン, 夏みかん果皮, 大豆粕などの添加も極めて有効であるが, ラムノースはこれらの構成成分の一であり, かつその極めて少量でも充分効果を果し得ることなどから, ラムノースはたゞ単なる炭素源としてではなく, 酵素生成を誘導する一有効因子であるものと推定される.またβ-グルコンダーゼの代表的基質であるサリシンはナリンジナーゼ生成には何らの効果を果し得ないことが認められた.
- 高知学園短期大学の論文
- 1970-05-20
著者
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