Bisphosphonates: 単純な構造で免疫系を動かす不思議な化学物質
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概要
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Bisphosphonates(BPs)はピロリン酸類似の化学物質で非加水分解性のP-C-P構造をもつ。BPsは骨のハイドロキシアパタイトに非可逆的に結合し, 繰り返し投与により骨に累積する性質をもつ強力な骨吸収阻害薬である。骨吸収の亢進を伴う種々の疾患への応用をめざして多くの誘導体が合成されている。これらの誘導体の中でアミノ基をもつaminobisphosphonates(ABPs)はアミノ基のない誘導体(non-ABPs)に比べ, 骨吸収抑制作用がはるかに強力である。しかし, ABPsは臨床的に炎症性の種々の副作用をもたらす。およそ10年前, ABPsがin vitroで肝臓および株化マクロファージでのコレステロール合成経路を阻害することが発見された。当時この発見は副作用のひとつと考えられたが, 今や, ABPsによる破骨細胞抑制機構の鍵をにぎる反応として認識されている。現在, ABPsとnon-ABPsの骨吸収抑制の作用機構は異なることが示されている。およそ10年まえ, 筆者らもABPsがマウスに多彩な炎症反応を誘導する副作用をもつことを報告した。筆者らは最近の研究で, ABPsの炎症作用はIL-1を介して発現されること, また, この炎症作用をnon-ABPsが抑制することを明らかにした。筆者らは, ABPsがマウスでの実験的関節炎を悪化し, 逆に, non-ABPsはこの関節炎を抑制すること, また, ABPsはLPSの炎症作用(IL-1の産生やヒスタミン合成酵素の誘導)を増強することも明らかにした。これらの結果をもとに, ABPsとnon-ABPsの作用機構について考察した。筆者らは, 副作用を軽減し骨吸収抑制作用を増強する方法として, 両者の併用を提案する。BPsは免疫系を動かす単純な構造をもつ不思議で魅力的な化学物質である。これらの物質は炎症・免疫反応の研究にさらに多くの興味深い情報を提供してくれるに違いない。
著者
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