炎症・免疫応答におけるヒスチジンデカルボキシラーゼの誘導
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概要
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ヒスタミンは動脈·静脈の収縮, 細動脈の拡張, 細静脈の拡張または収縮をもたらす. また, 血管内皮細胞に作用して毛細血管の透過性を亢進し, 免疫担当細胞の毛細血管でのローリング·接着·浸潤を促進し, ケモカインやサイトカインの産生を修飾し, Th1/Th2バランスにも影響する. 抗体や補体の産生のみならず癌の転移·増殖にも影響を与える. ヒスタミンの供給機構としてこれまでは, 肥満細胞と好塩基球からの遊離だけが考えられてきた. 一方, SchayerとKahlsonはヒスタミン合成酵素のhistidine decarboxylase (HDC)は誘導酵素であることを明らかにし, HDC誘導で産生されるヒスタミンは, 産生と同時に遊離され, 微少循環系の調節と細胞増殖に関与することを示唆した. Schayerはグラム陰性細菌のエンドトキシンまたはlipopolysaccharide (LPS)が強力なHDCの誘導物質であることも発見した. 筆者らはマクロファージがHDCを誘導する因子を産生し, これがIL-1であること, また, TNF, G-CSF, GM-CSF, IL-3, IL-12, IL-18もHDCを誘導することを明らかにした. IL-1, TNF, IL-12, IL-18は多くの組織(とくに毛細血管の豊富な組織)にHDCを誘導し, G-CSFとGM-CSFは造血組織(骨髄と脾臓)のにみHDCを誘導する. グラム陽性菌のペプチドグリカンもHDCを誘導する. HDCの誘導は肥満細胞欠損マウスでも起こる. このように, ヒスタミンの供給には肥満細胞·好塩基球が関与しない機構も存在する. この新しいヒスタミン供給機構は, サイトカインネットワークと連動したHDC誘導を介する機構である. この機構で産生されるヒスタミンを筆者らは“ネオヒスタミン”と呼ぶ. ネオヒスタミンは生理的反応, 炎症·免疫反応および種々の病態に関与する.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2001-07-01