接着性コンポジットレジン修復における歯質との接着,接合
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概要
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コンポジットレジン修復を行う際に, 良好な臨床成績を得るためには, 歯質と高い接着性, 良好な接合状態を有することが望ましい。ここでは, 臨床成績に影響を及ぼす修復材, 技法, 環境ホルモンBis-PhenolA(BPA)問題について検討した。まず, 臨床にできるだけ近い条件で接着強さを測定するためには, 成牛の新鮮抜去下顎前歯11あるいは1_2の象牙質を使用すべきであることを明らかにした。次いで, 多数の市販ボンディングシステムの接着強さ測定を行うととともに, 精密レプリカ法による歯質に対する接合状態のSEM観察を行った。試作Self Etching Dentin Bonding Agentでは, EDTA, マレイン酸, タンニン酸, チオシアン酸カリウム等にグルタールアルデヒド, 塩化第二鉄, HEMAを加えた処理液が効果的で, 象牙質と15MPa以上の接着強さを示した。市販ボンディングシステムでは, 3年までの接着強さを測定した。Imperva Fluoro Bond((株)松風), Mac Bond((株)トクヤマ), Super Bond D-Liner(サンメディカル(株)), Clearfil Liner Bond2((株)クラレ), Scotch Bond Multipurpose(スリーエムヘルスケア(株))等が特に大きな接着強さを示した。接着強さは経時的に減少したが, 2年経過しても低下しないボンディングシステムもあった。しかしこれらも3年後には低下した。ダルマシステム(ヘレウスデンタルマテリアル(株))も象牙質に対して優れた接合状態と臨床成績を示した。SEM観察からは, エッチング, プライマー処理, ボンディング材塗布処理を行った群のほうが接合状態が優れていた。また, リン酸エステル系より4-META/MMA-TBBのほうが一般に接合状態が優れており, 人歯でも同様の傾向がみられた。ボンディング材を3回塗布, コンポジットレジンを積層3回分割充填すると, 接合状態は1回充填法にくらべ明らかに優れていた。形成面精密レプリカのSEM観察により, 新鮮抜去歯切削象牙質面から, 接着・接合性に大きな影響を及ぼす細管内液の湧出を認めた。37%リン酸あるいは3%塩化第二鉄含有10%クエン酸処理を行うとこの滲出はみられなくなり, 経時的に減少し, 1時間後にはほとんどみられなくなった。また, 窩壁適合状態と接着強さについても検討し, 両者には高い相関が見られることを明らかにした。ベースレジンとして用いられている高分子量のBis-GMAはBPA骨格を有しているため, BPAが不純物として残存する場合があり, それがBPA溶出につながる可能性がある。分析機器の検出感度や測定技術の向上により, ごく微量のBPAが検出できるようになってきており, 溶出成分に関する種々の測定値が報告されている。良好な臨床成績を得るためには, BPA溶出が無く, 歯質に対する接着・接合性に優れた接着性コンポジットレジンを用いて修復を行うことが望ましい。
- 東北大学の論文
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