<論文>有田川流域の民家の間取り形式に関する一考察

概要

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これまでの考察結果から,以下の有田川流域の民家の特性を指摘することができる。1.有田川流域の民家は,下流域,中流域,上流域と河川域により様相が異なる。2.主屋は土間と床上部分から構成され,土間は下流域では通り土間形式が一般的で,中流域では炊事場が釜屋の形で張り出す形態がみられる。上流域では大幅に潰され,L字型や前土間のみの形態となる。そのために,下流から上流域に遡る程,土間は狭く,形も変形していく。3.間取り形式は,「紀北・中部型」と「紀中山間部型」,「紀南型],「並列型」の4種類に分類することができる。流域により分布する間取り形式が異なり,下流域から中流域にかけては「紀北・中部型」が集中し,上流域の清水町では「紀中山間部型」の間取り形式が主流を占めている。さらに上の高野山麓では,奥土間のない「紀南型」や「並列型」の間取り形式が分布する。「紀中山間部型」の分布域は長峰山脈を挟み,貴志川流域と同一域であるために,地域的な要因が考えられる。4.「紀中山間部型」は18世紀中期にはすでに有田川上流域でみられ,次第に発展する過程が確認される。その発展過程は,土間境食い違い三間取り形式からI型,II型に,さらにIII型,IV型へとすすむと推察される。そのために,土間境食い違い三間取り形式から,「紀北・中部型」に属さない独自の発展経路を辿ったといえる。5.「紀中山間部型」はダイドコロが発展するだけでなく,他室に分化する点に特性があり,ナンドの分化や日常的な接客空間であるアガリトの形成とも深く,関係している。

著者

千森督子
和歌山信愛女子短期大学

<論文>有田川流域の民家の間取り形式に関する一考察

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