<特集>冠動脈外科とともに : 一外科医の退任に際して(<特集>山内・酒井・細田・井上四教授定年退職記念講演会)
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概要
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1964年に私が一般外科のレジデントとして米国オハイオ州の高名なクリーブランドクリニックに留学した頃にはまだ今日のような冠動脈バイパス術(CABG)は存在していなかった時代である.しかしすでに1950年代にMason Sones, Jr.らにより開発された選択的冠動脈造影法は多数施行されており冠動脈病変の正確な解剖学的診断が可能になっていた.外科治療としてその頃は内胸動脈(ITA)を直接心筋に植え込むVineberg手術が行われているのみであった.Vineberg手術は正しい適応のもとに施行されると虚血性心筋に動脈血を供給することの出来る有効な術式であり,1960年代半ばにはCleveland Clinicでは多数の臨床例が行われていた.1967年になりFavaloroらによって始められたACバイパス術は非常に優れた手技であることが判明し,短時間のうちに虚血性心疾患外科治療の主流となり今日に到っている.Sones法選択的冠動脈造影の出現した1958年とFavaloroによるACバイパス術の始まった1967年との間には丁度10年間の時があるが,この時期にProudfitらによる非常に貴重な冠動脈疾患の自然歴(natural history)の研究が報告された.即ち冠動脈多枝病変および左主幹部(LMT)病変を有する患者の生命予後が内科治療のみでは極度に悪いことが判明し,この事実が優れた外科治療の出現を促す大きな原動力となっており,ACバイパスの出現は正に虚血性心疾患を持つ患者にとっては待ちに待った福音となったのである.私はこのような時代,即ち1964年から1970年までの6年間Cleveland Clinicと言う冠動脈疾患治療の世界的センターに居合わせたことを非常に幸運に思っている.以来30年Michigan州Kalamazoo,東京虎ノ門病院,そして順天堂大学医学部附属病院と冠動脈外科を中心に心臓血管外科医の道を歩んで来たが,今年3月にはその旅も終わりを迎えることになり,夢の如く過ぎた心臓外科医としての歳月を懐かしく振り返っている.
- 順天堂大学の論文
- 2001-10-19
著者
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