スターチス・シヌアータの挿し芽苗による促成栽培
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概要
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スターチス・シヌアータ(Limonium sinuatum Mill.)は、耐寒性の強い宿根草であるが、日本では栽培上秋まき一年生草として扱われている。スターチス・シヌアータは春化型の植物であり、一定期間の定温に遭遇した後、花茎を抽台として開花する6,8)。その後高温に遭遇すると脱春化して開花しないか、著しく開花が抑制される。Shilloは高温で生育した株はロゼットが破れず開花しなかったが、幼苗期を低温で経過した株は開花が著しく促進されることにより、開花には低温が必要であることを報告した9)。藤田は展開葉10枚程度の苗を1~2℃で40日間冷蔵すると抽台・開花が促進されることを明らかにした4)。また、吾妻らは、スターチス・シヌアータの催芽種子を2~3℃で30日間処理すると抽台・開花が促進され、種子発芽の段階でも定温に感応する種子春化型植物であることを明らかにした2)。しかし、冷蔵した苗も低温処理した種子もその後の高温で脱春化する2,4)。そこで吾妻・犬伏は種子低温処理と冷房育苗とを組み合わせ、脱春化を回避して10月から採花する栽培法を開発した3)。著者らは予備実験により、7月頃にまだ催花状態にある株から芽を取って挿し芽し、小苗で夏を越させると脱春化しないで開花し続け、10月中旬からの採花が可能であることを認めた。本実験ではスターチス・シヌアータの挿し芽苗による脱春化の防止について検討し、その結果をもとに早期促成栽培への基礎データを得ようとした。まず、採し芽の時期による脱春化防止の程度について調査し、次に7月中旬挿し芽苗の育苗方法について検討した。With the aim of preventing devernalization of statice (Limonium sinuatum Mill.) during summer in order to force the production of cut flowers harvestable from autumn, plants of cvs. 'La Mer' and 'Sunday Pink' were propagated by cuttings in late spring to late summer. Flowering stock plants were cut back thoroughtly, and after 15 days newly emerged vegetative buds were divided individually and rooted under intermittent mist. The rooted cuttings were planted in plastic pots and raised for 30 days followed by transplanting into wooden containers (36×60×D 18cm), 5 plants a container. During the two month's period after propagation, all emerging flower stalks were removed to allow a vigorous vegetative growth of plants. Plants propagated on 16 May, 15 June and 15 July, produced cut flowers starting from October, unlike those that were propagated on 14 August which did not flower until December. However, cut flowers of higher quality were mainly obtained from those plants that were propagated on 15 July. In addition, when the young propagated on 15 July were raised in the open field and under trees or in a cool house system, starting from October they produced more cut flowers that were of even higher quality than those raised in a plastic house. Only the plants that received water stress treatment during the potting stage flowered from November. There, from this forcing culture using cutting plants, marketable cut flowers of statice can be obtained from October without the usual requirement of low/cool temperature treatment.
- 岡山大学の論文
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