<原著>直腸癌に対する低位前方切除術におけるJ型結腸嚢の意義
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概要
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目的 : 直腸癌に対する低位前方切除術の排便機能はJ型結腸嚢(J-pouch)による便貯留嚢の再建で従来のストレート再建よりも改善されることが報告されている.しかし排便困難がしばしば認められ, これはJ-pouchの容量と関係すると考えられるが適切なJ-pouchのサイズについて検討した論文はまだない.そこでよりよいJ-pouchのサイズについて検討した.方法 : 癌腫の壁深達度が固有筋層以上で肛門縁から癌腫までの距離が5〜10cmの直腸癌に対する前方切除術を対象に5cmと10cmのJ-pouchを使った排便機能の検討を行った.この検討はprospective randomized studyとし1992年4月より始めた.術後1年に臨床的機能評価と生理学的機能評価を行った.前者は直接問診による解答を点数化することで, 後者は, 直腸肛門内圧検査で括約筋能と貯留能を, balloon expulsion testとsaline evacuation testで排出能を評価した.結果 : 42人がrandomizationされそのうち40人が機能評価が可能であった.この40人のうち5cm J-pouch再建群(5J群)が20人, 10cm J-pouch再建群(10J群)が20人であった.括約筋能については5J群と10J群の間に有意差はなく, 貯留能については5J群の最大耐容量, 便意発現最小量, コンプライアンスはそれぞれ98.5ml, 40.0ml, 4.5ml/cmH_2Oで10J群の129.5,70.3,6.4よりも有意に小さかった.臨床的機能評価は点数域0点から28点まであり, 0点に近いほど排便機能良好であり, 28点に近いほど不良であるが, 5J群4.4点と10J群4.3点の間に有意差はなくかつ良好であった.排出能についてはballoon expulsion testで5J群の排出可能症例は18人で10J群の10人よりも有意に多く, 5J群の努責時最大J-pouch内圧は130.1cmH_2Oで10J群の94.8cmH_2Oより有意に高かった.saline evacuation testでも5J群の排出量は430.5mlで10J群の279.2mlよりも有意に多かった.結論 : 低位前方切除術の排便機能はJ-pouchを作成することにより改善される.そして貯留能と排出能の両立という点で5cm J-pouchの方が10cm J-pouchよりも良いと考えられた.
- 近畿大学の論文
- 1996-06-25
著者
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