数種特異的阻害剤による Phytophthora capsici の無性的分化過程の代謝依存性の推察(農学部門)
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概要
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作用機作がすでに知られている各種特異的阻害剤を用いて, Phytophthora capsiciの無性的生活環における種々の分化の過程の代謝依存性を推察した。RNA合成阻害剤であるアクチノマイシンDは菌糸伸長, 遊走子のう形成, ならびにその発芽を抑制したが, 遊走子の遊泳や被のう胞子の発芽にはほとんど影響しなかった。蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミドはアクチノマイシンDで阻害を受けた過程と, さらに被のう胞子の発芽をも強く阻害した。酸化的リン酸化の阻害剤であるオリゴマイシンはすべての分化過程を阻害したが, 同じ呼吸阻害剤であるアンチマイシンA(電子伝達系阻害剤)は菌糸伸長ならびに被のう胞子の発芽を阻害することができなかった。このことは, それらの過程で電子伝達系が作動していないと考えるよりは, アンチマイシンがそれらの過程において菌の細胞内にとり込まれにくいと考えるほうが妥当である。それと同時に, それらの過程においては物質の透過性をつかさどる菌の原形質膜に何らかの差異があることをも示唆する。このことは菌糸伸長ならびに被のう胞子の発芽過程がナイスタチン(細胞膜のステロール類と結合することにより膜機能を阻害する)に不感受性であることからも示唆される。microtubule阻害剤であるビンブラスチンは遊走子のう形成ならびにその発芽を強く阻害し, また菌糸伸長をも若干阻害した。またmicrofilament阻害剤であるサイトカラシンBは分化のどの過程に対しても顕著な阻害を示さなかった。これらの結果より, それぞれの分化の過程における特定の代謝の依存性が推察された。また, アクチノマイシンDとシクロヘキシミドに対する不感受性によって示された遊走子の遊泳期におけるRNAならびに蛋白合成の不必要は^<14>Cのアミノ酸またヌクレオシドの取り込み実験からも支持された。
- 京都府立大学の論文
- 1976-11-30
著者
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田中 裕美
Laboratory Of Plant Pathology Faculty Of Agriculture Kyoto Prefectural University
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吉川 正明
Laboratory of Plant Pathology
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正子 朔
Laboratory Of Plant Pathology Faculty Of Agriculture Kyoto Prefectural University
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宮田 善雄
Laboratory of Plant Pathology, Faculty of Agriculture, Kyoto Prefectural University
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