塗装木材の内部応力に関する研究 III : 塗膜形成過程中に発生する応力について(林学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本報は塗装木材の塗膜内部に発生する内部応力を明らかにすることを目的として, 前報と同じ組成および配合比の4種の木材用塗料を用い, 塗膜形成過程中に発生する応力の経時的変化を測定したものである。測定装置はFig. 1,試験片はFig. 4に示す形状および寸法のヒノキ曲げ試験片で, 塗装試験片のたわみを阻止するに要する荷重を測定し, (2)式から応力を計算した。得られた主な結果を要約すると次の通りである。1)塗膜形成過程中に発生する応力は次の3つ, [○!A]塗布時の塗料と木材との温度差にもとづく正の応力(木材温度が高い場合, 塗布面側 : 凹), つづいて[○!B]塗料膨潤成分の木材中への浸透にもとづく負の応力(塗布面側 : 凸), さらに[○!C]硬化のさいの塗料の容積収縮にもとづく正の応力(塗布面側 : 凹), に区別できる(Fig. 6∿9)。2)重合硬化型のポリエステル樹脂塗料の膨潤および収縮応力は乾燥条件60℃, R. H. 30%の場合を除くと4供試塗料の中では最小である(Fig. 8,9,Table 1,2)。3)溶剤揮散硬化型のニトロセルロース・ラッカー塗料は若干の可塑剤を含有し, しかも溶剤の揮散が著しいのでポリエステル樹脂塗料に次いで膨潤および収縮応力が小さい(Fig. 8,9,Table 1,2)。4)付加重合硬化型のポリウレタン樹脂塗料では膨潤応力に比較して収縮応力が小さいために負の応力経過をたどり, 応力の逆転が生じない。なお, この塗料は乾燥条件によって短時間側と長時間側に負の最大応力の存在することが予想される(Fig. 8,9,Table 1,2)。5)プチル化尿素樹脂やメラミン樹脂を含有する脱水縮合硬化型のアミノアルキッド樹脂塗料は4供試塗料の中で最大の膨潤および収縮応力を発生し, しかも応力の逆転や硬化の終了に最も長時間を要する。なお, 乾燥条件60℃, R. H. 50%の場合には他の乾燥条件に比較して膨潤および収縮応力が最も低い(Fig. 8,9,Table 1,2)。
- 1967-10-15
著者
関連論文
- 木材の非破壊評価法への伝達関数によるモード解析法の適用(第1報)たわみ振動波形による木材の局部欠点の検出
- 塗装木材の内部応力に関する研究 III : 塗膜形成過程中に発生する応力について(林学部門)
- 温度効果から見たPEGによる木材の寸法安定性の発現機構(第2報)PEG吸着の温度依存性と処理木材の力学的性質
- 温度効果から見たPEGによる木材の寸法安定性の発現機構(第1報) バルキング効果
- ポリエチレングリコール処理木材の寸法安定性(林学部門)
- 木材の乾燥応力について(林学部門)
- 木材の衝撃曲げ吸収エネルギに及ぼす試片寸法, 比重ならびに含水率の影響
- 木材の静的曲げにおけるひずみエネルギに及ぼす含水率の影響
- 木材の曲げクリ-プに及ぼす繊維傾斜角の影響〔英文〕
- 圧縮木材の力学的性質
- 飽水木材中における非電解質の拡散-2-一価アルコ-ルの拡散速度〔英文〕
- 飽水木材中の溶質拡散 4-5-3価電解質の拡散速度について〔英文〕
- 飽水木材中の溶質拡散 IV : (4) 2 価電解質の拡散速度について(林学部門)
- 飽水木材中の溶質拡散 IV : (3) 2 価電解質の拡散速度について(林学部門)
- 乾燥応力に関連する木材の物理的, 機械的性質(林学部門)
- 木材に対する各種液体の吸着性と膨潤性(第5報) 吸着の膨潤度依存性
- 木材に対する各種液体の吸着性と膨潤性(第3報) 各種有機液体の乾燥木材への吸着性
- 各種膨潤状態における木材の動的粘弾性
- 中国滞在記
- 抽出処理したモウソウチクの動的粘弾性
- 層状構造を持つ木材の音速について
- モウソウチクの動的粘弾性と節間番号,竹齢,および比重の関係
- 木質材料小特集号によせて(木質材料小特集)