タケノホソクロバ幼虫の集合性の研究 II : 単独飼育が幼虫, 蛹の生存, 発育に及ぼす影響の時間的変化について(農学部門)
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概要
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タケノホソクロバ幼虫は3∿4令期まで集団生活をし, 以後分散によって集団を解体する。集団の効果を明らかにするために前報(1962)では幼虫期間中集団の大きさを一定に保ったので分散期前に予想される集団の効果と分散期後の密度効果とが混然として集団の効果を正確に把握できなかった。そこで分散期を境にこれら2つの効果の大きさとその時間的変化を明らかにするために1962年には集団飼育された中から一定個体数を単独飼育に移し, 1963年には分散期前に集団から単独飼育への移行が発育に及ぼす影響をより確実に知るために4令期に単独飼育に移した区とふ化直後から単独飼育を行った区とを設けて比較した。1. 1令分離区では死亡率は1令期に20∿30%と高く, 以後低下する。他方終令まで集団飼育すると分散期前には殆んど0%, 4,5令期以後急激に高まり50∿70%となる。また全幼虫期間の総死亡率は1令分離区で40∿60%と最高で, 5令分離区がこれに次ぎ, 2∿4令分離区ではかなり低くなり, 後者の3区の間に差がほとんどない。2.幼虫期間は1,5令分離区で長く, 2∿4令分離区ではより短かく, 且つ後者3区の間に差がほとんどない。4令分離区に比べ1令分離区では2∿3日発育が遅れる。3. 1令分離区では4分離区に比べ, 高令型幼虫の出現頻度がより高い。4. 1,4令両分離区の幼虫の各令期日数は雌雄, 令型をとわず1令期に差がなく, 2令期に1令分離区のほうがやや長く, 3令期では逆転し以後は1令分離区のほうが長い。しかし両区の間に特に大きな差のある令期はない。5.令数の決定時期を1令分離区に現われた5,6令型幼虫が経た各令期日数の差から推定するとすでに2令期には決定されているようである。6.蛹期間の長さ, 蛹体重は1,4令両分離区の間に差は認められない。以上より生存, 発育の面から推測すると, 1令期に集団に対する依存性が最も大で以後はかなり低下する。したがって本種自然個体群は1令期に内, 外いずれかの要因によって集団を維持できない状態に陥ると集団構成員は集団に対する依存性が満されず生存, 発育にかなりの悪影響を被るであろう。
- 1964-09-01
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