セスジユスリカの卵塊の生存と水位低下について(農学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
セスジユスリカの卵塊は水位低下による脱水によってどのような影響を受け, またどの程度それに対処することができるかを知るために若干の検討をした。1)時間に対するふ化幼虫の卵塊脱出率曲線は対数正規性をもつことが分ったので, プロビット変換によってこの曲線を直線化して卵塊からの脱出の斉一性を検討したが, 供試したかぎりの大きさの卵塊では卵塊の大きさと脱出の斉一性の間には一定の関係がないようであった。2)不ふ化卵率は卵塊の大きさが400∿500の範囲で最小となり, この範囲をはずれるにつれて大きくなった。3)卵塊をMgCl_2飽和溶液によって調節した低湿度条件下において脱水すると大きい卵塊ほど水分喪失率が小さくなる。たとえば50分間この条件にさらしたとき200と600卵粒からなる卵塊の間に20%近くの差があった。4)脱水後の水分量を一定期間維持すると, 脱水前の卵塊重に対する脱水後の卵塊重の割合Rwが0日区で2.5%, 2日区で7.5%のときを境に死亡はall or nonとして起こった。4日区ではRwが30%のときにさえ80%以上の死亡率を示した。5)4)の実験に際して頭蓋が多数観察されたが, この割合は0日区で約17%, 4日区でほぼ全幼虫に相当し, この原因は〃とも食い〃による犠牲と死亡個体が他個体のえさとなったためであろう。以上から産卵後幼虫が水中に遊離するまでの期間が比較的短かいこと(25℃で約1.5日), また水位低下に際しては水分喪失率の小さい大型の卵塊が生き残る確率が高いことによって本種個体群は卵期における水位低下に対処していると推察される。
- 京都府立大学の論文
- 1966-09-01
著者
関連論文
- タケノホソクロバ幼虫の集合性の研究 II : 単独飼育が幼虫, 蛹の生存, 発育に及ぼす影響の時間的変化について(農学部門)
- モンシロチョウ幼虫と寄生蜂アオムシサムライコマユバチの空間的関係について(農学部門)
- キツネノボタンハモグリバエ幼虫の令期判定のための簡便法
- セスジユスリカの卵塊の生存と水位低下について(農学部門)
- トビムシ類の侵入・定着における土壌有機物の影響
- 昆虫個体群における発育段階別生存率の推定法