健康高齢者に対する予防的・健康増進作業療法プログラムの効果 : ランダム化比較試験
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概要
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目的 予防的・健康増進作業療法プログラムが,地域に在住する健康高齢者のQOL の身体の痛みに関する領域,心理的領域,環境領域,そして生活満足度に与える効果をランダム化比較試験によって検証する。方法 研究デザインはランダム化比較試験であった。対象は65歳以上の健康な高齢者で,全国5 か所で,新聞広告等で募集し,募集に応じた220人を,各地区を層としてランダム化し,実験群111人と対照群109人とに割り付けた。実験群は,作業療法の概念的実践モデルである人間作業モデル(以下,MOHO)の構成要素である「能力の自己認識」,「価値」,「興味」,「役割」,「習慣」,「運動技能」,「処理技能」,「コミュニケーションと交流技能」,「物理的環境」,「社会的環境」の10の概念の講義と演習を実施するMOHO プログラム群,対照群は,作業活動を実施する活動群と,無治療群とした。先行研究で対照群内の2 グループを併せて対照群としたため,今回も併せて対照群として解析をおこなった。プログラムは,実験群,対照群ともに原則として1 回120分,月2 回,全15回であり,2008年から2010年にかけて実施した。測定は,the MOS 36–Item Short–Form Health Survey(以下,SF–36)の身体の痛み(以下,BP),WHO/QOL 26(以下,QOL26)心理的領域および環境領域,そして生活満足度指標Z を,初回(T1)と最終回(T2)に実施した。実験群と対照群の変化量(T2–T1)の比較はt 検定を用いておこない,検定の有意水準は5とした。結果 フォローアップ率は実験群71,対照群72であった。解析対象は,欠損値のない実験群80(71.1±4.68歳),対照群79人(71.4±4.66歳)で,年齢を含めたすべての項目において,ベースラインで2 群間に有意差は認められなかった。変化量(T2–T1)の比較において,SF–36のBP とQOL26の環境領域は,対照群に対して実験群が有意に高かった(順にP=.05, P=.02)。結論 MOHO プログラムは,健康な高齢者の老化の生理的変化に対処するニーズや,環境への影響に関するニーズに応え,QOL の身体の痛みに関する領域や環境領域に与える効果が明らかにされた。MOHO プログラムは,作業と健康に関するヘルスリテラシー(作業リテラシー)の向上を図る有効な介入方法として期待できる。Objectives The purpose of this study was to evaluate the effectiveness of an occupational therapy program for health promotion among healthy elderly by a randomized controlled trial.Methods Participants were 220 community-dwelling healthy elderly, 65 years of age or older. They were assigned randomly to: an experimental group receiving a 15–session MOHO program consisting of lectures and seminars about personal causation, values, interests, roles, habits, motor skills, process skills, communication and interaction skills, and environment; a control group which received a 15–session crafts program or no treatment. Quality of life was compared between groups using the MOS 36–Item Short–Form Health Survey (SF–36), WHO/QOL–26 (QOL26) and Life Satisfaction Index Z. The Fisher's exact test and the t-test were used to assess differences between the twogroups.Results The follow-up rates for the experimental and control groups were 71% and 72%. The experimental group comprised 80 people (mean age±SD, 71.1±4.68 years) and the control group 79 (71.4±4.66 years). Mean change of the following items for the experimental group was significantly greaterfrom that of the control group: a BP of SF–36 (P=0.05); and an environment score of QOL26 (P=0.02).Conclusion The findings provide evidence that the MOHO program can meet coping and influence needs, thus improving QOL. We further conclude that the MOHO program is an effective interventional method for improvement of literacy about health and occupation.
- 2012-02-15
著者
-
山田 孝
首都大学東京大学院人間健康科学研究科
-
小林 法一
首都大学東京健康福祉学部
-
山田 孝
首都大学東京
-
川又 寛徳
首都大学東京健康福祉学部作業療法学科
-
山田 孝
首都大学東京大学院人間健康科学研究科作業療法科学域
-
小林 法一
首都大学東京大学院人間健康科学研究科作業療法科学域
-
山田 孝
首都大学東京 大学院人間健康科学研究科
-
川又 寛徳
首都大学東京
-
小林 法一
首都大学東京大学院人間健康科学研究科
-
山田 孝
目白大学保健医療学部作業療法学科
-
小林 法一
首都大学東京健康福祉学部作業療法学科
-
小林 法一
首都大学東京人間健康科学研究科作業療法科学域
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