個人的プランクトン研究史とこれからのプランクトン学会のあり方
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概要
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私は日本プランクトン学会会長として、プランクトン学の将来を考え、学会をリードすべき立場にある。学会の活性化に向けて、若い研究者への期待は大きい。プランクトン研究者として世間的には通用しているかも知れないが、自らが歩んできたプランクトン研究の経緯を振り返ると、多くの偶然事が今日の自分をもたらしていることに気付く。今後、私と似たような経験を持つ研究者がきっと出現するだろうし、また何かの縁でプランクトン研究に目を向けてくれる学生諸君もきっと現れるだろう。ここに極めて個人的な体験を述べる目的は、そのような若い人達の激励、刺激、プランクトン学へのきっかけになれば幸いであるとの思いを伝えたいためである。プランクトン研究者として自己の歩んだ道程を振り返ると、多くの偶然の積み重ねである。キジハタが産卵しなかったことによるカイアシ類研究の着手は、偶然にも休眠卵の研究に発展して行った。憧れの先生に出会い、スクリップス海洋研究所に留学でき、次第に広がる交友関係を通して多くの啓発し合える先生、同僚、友人と知り合いになれたのも、ほとんどが偶然の賜物である。「お前は主体的に何もやってないではないか。」との声が聞こえそうだが、いや本当そうかも知れない。私は多くの国内外のプランクトン学の先人によって育てられてきたと思っている。自ら新しい研究を展開する希望は捨てていないが、これからは若い人を育てることにより貢献すべきであると思っている。今、プランクトン学会は次第に高齢化して、元気を失いかけている。これを救うのは若い人の溢れんばかりの活力である。これからのプランクトン学はかつてのような単純な調査研究内容ではないのかも知れない。それならこれまで以上の知力、体力で取り組むべきであろう。プランクトン学の中にまだまだ多くの未知の世界が広がっているのはまぎれもない事実であるから、若い人の活躍には多くを期待している。
- 日本プランクトン学会の論文
- 2003-02-25
著者
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