時間栄養学と健康
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
からだのリズムは,体温や血圧,睡眠,運動などの生命活動を始め,心と身体の健康を管理している司令塔であり,生活リズムに適応するための自律的な予知機能も備えている.明暗サイクルのあるなしに関係なく,一定の摂食時間に餌を与えると血中副腎皮質ホルモンはいずれも摂食直前にピークを示す日内リズムが形成される.次の日から絶食にしても血中副腎皮質ホルモンの日内リズムは持続し,典型的な内因性のリズムを示す.このことから,血中副腎皮質ホルモンのリズム発現には,明暗サイクルより摂食サイクルが重要であると考えられる.血中副腎皮質ホルモンのリズム形成には口から摂取する食餌そのものと,食餌を感知する消化管が関与している.血中副腎皮質ホルモンのリズム形成・維持には摂食リズムと食餌の刺激を感知する空腸が重要な役割を果たしている.ヒトでの研究においても同様の知見が得られ,血中副腎皮質ホルモンのリズム形成には,摂食リズムが重要であることを明確に示した.一方,ヒラメ筋グリコーゲンは摂食によって増加し,その後減少する日内リズムが認められる.しかし,1日摂食量の1/3を遅い時刻に摂食させた場合,摂食によるヒラメ筋グリコーゲンの増加はなかった.また,脳などにグルコースを供給する肝臓グリコーゲンは,摂食によって増加し,その後,糖新生の利用による低下が認められる.しかし,1日摂食量の1/3を遅い時刻に摂取させると肝臓グリコーゲンの総貯蔵量は減少した.つまり,遅い時刻に摂取する夜食では,摂取した栄養素が筋肉や肝臓グリコーゲンの合成に利用されず,むしろ脂肪蓄積につながると考えられる.次に,食塩の摂取と血圧との関係を時間栄養学の観点から検討した.朝や昼に比べて夕食後に食塩の尿排泄が多く,血中アルドステロンの日周リズムと連動していた.血中成長ホルモンの分泌は,朝の運動で減少し,夕方の運動で増大した.トレーニング効果を高めるためには生体リズムを考慮することも重要である.以上のことから,時間栄養学は体内時計が実証する新しい健康科学である.
- 2011-03-01
著者
-
加藤 秀夫
広島女学院大学
-
西田 由香
徳島大学大学・院・ヘルスバイオサイエンス研究部・臨床栄養学分野
-
西田 由香
安田女子大学
-
加藤 秀夫
県立広島大学大学院総合学術研究科
-
西田 由香
広島女子大学
-
西田 由香
県立広島大学 大学院総合学術研究科
-
国信 清香
県立広島大学 健康科学科
-
齋藤 亜衣子
県立広島大学 健康科学科
-
出口 佳奈絵
県立広島大学 健康科学科
-
加藤 悠
県立広島大学 健康科学科
-
西田 由香
県立広島大学 健康科学科
-
西田 由香
県立広島大
-
加藤 秀夫
県立広島大学 健康科学科
-
加藤 秀夫
県立広島大
-
加藤 秀夫
県立広島大 大学院総合学術研究科
関連論文
- 奥能登に飛来したコウノトリ(Ciconia boyciana) の生息環境と行動
- 3. 高リン食摂取によるカルシウム・リン・ビタミンD調節系の変動(第314回会議研究発表要旨,脂溶性ビタミン総合研究委員会)
- 無機質の尿排泄におけるコーヒーの影響(健康科学科)
- 「早寝・早起き」で始まる食習慣 (特集 食生活を見直す) -- (心をはぐくむ家庭の食生活)
- 果糖は健康に良いのか悪いのか?
- 児童生徒の身体状況と生活習慣の季節的変化
- 広島県民の生活・健康状態と医療費について
- 高齢および摂食・嚥下障害者の栄養改善
- からだのリズムと生活習慣病 (第50回日本体質学会総会特集) -- (シンポジウム1 生活習慣病をめぐって)
- 食餌の組み合わせと摂食時刻の違いによる生体への影響
- 療養型病床患者における栄養スクリーニング
- 時間栄養学と健康 (特集 時間薬理学と時間栄養学による新しい治療戦略の開拓)
- 尿酸代謝における肝臓の生理的役割
- 肝臓の糖質代謝リズムに関する研究(2)食餌蛋白質量の影響について
- 肝臓の糖質代謝リズムに関する研究(1)特に摂食時刻に関して
- 地域の健康課題と生活習慣--広島県江田島市における健康実態調査より
- 時間栄養学と健康
- 肥満ラットにおける補正下着の着用による減量効果
- 時間栄養学と健康
- 長寿の秘訣を時計遺伝子から探る(第4回)時間栄養学からスポーツ・運動を科学する
- 肥満ラットにおける補整下着の着用による減量効果
- 肝臓の糖質代謝リズムに関する研究 (2) : 食餌蛋白質量の影響について
- 肝臓の糖質代謝リズムに関する研究 (1) : 特に摂食時刻に関して
- 地域の健康課題と生活習慣 : 広島県江田島市における健康実態調査より
- 尿酸代謝における肝臓の生理的役割