ラット・マウスを用いた悪心・嘔吐の研究法
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ラットやマウスなどの齧歯類動物には嘔吐反射はないが,抗がん薬の投与や回転刺激,放射線照射など催吐作用のある刺激を与えると,カオリンなどの通常の餌としては異常な物に対して食欲を示すパイカ行動(異味症)が現れる.催吐刺激により現れるこの行動はそれぞれの刺激に特異的な制吐薬の前処置によって抑制でき,われわれはパイカ行動を指標とすれば齧歯類を悪心・嘔吐の研究に応用できることを報告してきた.齧歯類でも特にマウスは遺伝子改変動物を用いることができるなど利点も多いが,催吐刺激によるカオリン摂取量は,ラットに比べて非常に少ないことや,カオリンペレットをあちこちに食べ散らかすために摂取量の正確な測定は困難であった.そこで,われわれは経口摂取しても消化管から吸収されず糞便中に排出される赤色色素のカルミンを添加して作成したカオリンペレットを用い,催吐刺激後2日間の糞便を回収し,糞便中から抽出したカルミンを比色定量することにより精度よくマウスのカオリン摂取量を定量する方法を開発した.これまではイヌ・フェレット・ネコ・ブタ・サルなどの中型から大型の比較的高価で遺伝的なバックグラウンドが一定していない動物を用いざるを得ず,多大な労力と費用のかかっていた悪心・嘔吐の実験を,齧歯類動物のパイカ行動を利用することによって簡便化することができ,悪心・嘔吐の発症機構そのものの研究に加え,新規薬物の有害作用としての悪心・嘔吐のスクリーニングにも広く応用できるものと期待している.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2008-08-01
著者
-
大和谷 厚
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 医療技術科学分野
-
山本 浩一
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻
-
山本 浩一
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 医療技術科学分野
-
大和谷 厚
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻
関連論文
- 宇宙適応症候群の動物モデルの開発と発症機序の検討
- 脳内ヒスタミン神経系を介するレプチンによる摂食抑制機構(II 食欲調節因子と味覚-4)
- Physiological Reactions Induced by Larval Ascaris suum Infection
- Immunological Parameters Affected by Larval Ascaris suum Infection
- 嘔吐モデルとしてのマウスパイカ行動の系統間比較
- 鼓索神経を介した味覚情報によるラット視床下部からのヒスタミン遊離
- 健常者に対するクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)の心機能、冠動脈血流への影響 : 心エコー図による検討
- ラットにおける p-chloroamphetamine による勃起誘発と勃起時の腹部大動脈血流量の変化
- 性機能に関連した循環生理学的検討のためのラット勃起誘発モデルの作成
- ラット・マウスを用いた悪心・嘔吐の研究法
- マウスの異味症を指標とした嘔吐動物モデルの作成
- 前庭機能におけるヒスタミンレセプターの役割
- 461 放射線宿酔動物モデルの作成
- 性格改善薬 : SSRI とうつ病治療
- ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト)の Exercise-Induced Bronchospasm (EIB) に対する抑制効果の多施設二重盲検交叉比較試験による検討