バスキュラーアクセス聴診法の工夫 : チューブ聴診
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概要
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バスキュラーアクセス (以下, シャント) 管理法の一つとして, 聴診器により血管雑音を聴取する方法がある. しかし, シャント音を聴取するのに聴診器が適しているかどうか, 十分検討されていない. われわれは聴診器のチェストピースを取り去り, チューブの先端を皮膚に垂直に軽く密着させ血管雑音を聴取した. チューブ聴診と命名し, 聴取される血管雑音を従来の聴診法 (以下, チェストピース聴診) による血管雑音と, 高速フーリエ変換を用いて比較した. チェストピース聴診では, 低調性血管雑音が広範囲にわたって, ほぼ一様に聴取された. 狭窄部では高調性雑音の聴取が困難な場合があった. 一方, チューブ聴診では, 乱流を生じている部位ではチェストピース聴診と同等の大きさの血管雑音が聴取されたが, 乱流部位から離れると急に小さくなった. また, 狭窄の前後で音量が急激に増加し, 狭窄部で高調性雑音となり, 狭窄部を過ぎると低調性雑音に変化していた. このことから, チューブ聴診は狭窄部位の判断に有用と考えられた. 高度の狭窄によりスリルが消失し拍動のみとなったシャント血管において, チェストピース聴診では低調性雑音が聴取されたが, チューブ聴診では雑音の聴取が困難であった. しかし, チューブの先端に超音波用ゼリーを塗り, 血管壁を圧迫しないようにすると, 低調性血管雑音が聴取された. 以上のことから, 血液の乱流により生じた振動は, 血管壁を介して乱流がない血管にも伝播しており, チェストピース聴診ではこの伝播した振動を聴取していると考えられた. 一方, チューブ聴診では, チューブの先端が周囲から伝播してくる血管壁の振動を抑えるため, 実際に乱流が生じている血管で雑音が聴取されると考えられた. チューブ聴診は内シャントの管理に適した聴診方法であり, 従来の聴診器のチェストピースを取るだけで使用できるため安価で, いつでも誰でも行うことができるという利点を有する.
- 2007-10-28
著者
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