慢性関節炎発症時における非ステロイド系抗炎症薬による消化管傷害性の変化
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概要
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慢性関節リウマチ(RA)患者では非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)の消化管傷害性が増大していることを実験モデルを用いて基礎レベルで再現し,その機序について検討した.実験的関節炎モデルであるアジュバント関節炎ラットでは,インドメタシンにより誘起される胃損傷が関節炎の程度に依存して著明に増悪した.この増悪は誘導型一酸化窒素(NO)合成酵素(iNOS)由来のNOに起因していることが判明した.また,消化管傷害性の少ない抗炎症薬として注目されている選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)もまた関節炎ラットでは従来のNSAIDsと同様に胃損傷を惹起した.このことは,関節炎ラットの胃粘膜においてはCOX-1のみならずCOX-2由来のプロスタグランジン(PGs)もまた恒常性維持に寄与していることを示唆している.さらに,関節炎ラットでは傷害発生のみならず,一旦発生した慢性潰瘍の治癒も正常ラットと比較して有意に遅延した.インドメタシンの連続投与は正常ラットにおける治癒を有意に遅延させたが,関節炎ラットではインドメタシンによる治癒遅延がさらに助長された.関節炎ラットにおける慢性潰瘍の治癒遅延は,治癒過程において重要な役割を担っているbasic fibroblast growth factor(bFGF)などの細胞増殖因子の発現異常に起因していることが判明した.アジュバント関節炎ラットを用いたこれら一連の検討の結果は,実際のRAなどの慢性的な全身性炎症状態における消化管粘膜機能やNSAIDsなどの薬物に対する感受性が変化していることを示唆するものであり,臨床的にも興味深い.従って,RA患者に対するNSAIDsの使用は特に慎重になる必要があると考えられ,またRAなどをターゲットとした抗炎症薬などの開発においては,関節炎を発症させた動物を用いて基礎研究を行うことが副作用の軽減という観点からも重要であると考えられる.
- 2006-08-01
著者
-
竹内 孝治
京都薬科大学薬物治療学教室
-
加藤 伸一
京都薬科大学病態薬科学系薬物治療学分野
-
竹内 孝治
京都薬科大学 薬物治療学 教室
-
竹内 孝治
京都薬科大学病態薬科学系薬物治療学分野
-
加藤 伸一
京都薬科大学 病態薬科学系 薬物治療学分野
-
竹内 孝治
京都薬科大学 病態薬科学系 薬物治療学分野
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