中世日本人の破損頭蓋の性別判定
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概要
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鎌倉市の由比ヶ浜地域に所在する遺跡からは,これまで数千体の中世人骨がみつかっている。しかし,由比ヶ浜地域の多くの人骨は,頭蓋の集積墓から破損した状態で出土しているため,正確な性別判定は困難である。頭蓋の性別判定は,計測値に基づく判別分析が有効であるが,埴原(1959, 1981)や田中ほか(1979)の判別分析法を中世人骨に直接あてはめることは2つの理由から難しい。1点目は,従来の判別法は,頭蓋全体の計測値から判別式を導いているため,欠損部位が多くみられる中世人骨には実用性が乏しい。2点目は,従来法は現代日本人頭蓋からのデータを用いて導いた式であるため,頭蓋形態が現代人と異なる古人骨,特に長頭・低顔・歯槽性突顎を特徴とする中世人頭蓋の性別判定においては正確性に問題があると思われる。 本研究では,鎌倉市出土の中世人頭蓋に基づいて性別判定の判別式を求めた。計測部位は,乳様突起など,破損した頭蓋でも遺残しやすい部位である。本研究で求めた判別式のうちの1つは,乳様突起長1項目だけに基づく式でも80%の的中率を上回っていた。また,計測項目を増やして判別式を求めた場合にはより高い的中率が得られた。本研究の判別式は,保存状態が悪い中世人頭蓋の性別判定に有効である。
- 日本人類学会の論文
- 2005-06-01
著者
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平田 和明
聖マリアンナ医科大学医学部解剖学講座
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長岡 朋人
聖マリアンナ医科大学医学部
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平田 和明
聖マリアンナ医科大学 医学部解剖学講座
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平田 和明
聖マリアンナ医大・解剖
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平田 和明
聖マリアンナ医科大学
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長岡 朋人
聖マリアンナ医科大学医学部解剖学教室
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