幼児期ラットの虚弱下顎骨における食餌療法に関する X 線的骨塩量, 光顕的および超微形態的研究
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概要
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ヒト幼児期に相当する5週齢のWistar系雄ラットを30匹使用し, カルシウム欠乏食と低カルシウム食30%を3週間与え虚弱骨を惹起した.直ちに標準食に切り換え3週間飼育し, 骨基質形成について検索し, 以下の結果を得た.1. X線学的所見カルシウム欠乏食群の歯槽骨は細く, 骨梁は疎で配列も不規則であった.低カルシウム欠乏食群は, カルシウム欠乏食群と比べ歯槽骨は厚さを増しているが対照群と比べると未だ骨梁は疎な部分も多く認められた.2. 骨塩量3群間では対照群と比べカルシウム欠乏食群間には有意差が認められカルシウム欠乏食群が低値を示した(p<0.05).3. X線マイクロアナライザーによるCa, Pの分析相対カルシウム量比は, 対照群>カルシウム欠乏食群=低カルシウム食群で, 相対P量比はカルシウム欠乏食群>低カルシウム食群>対照群の順であった.4. 病理組織学的所見下顎骨における舌側歯槽骨から, 唇側歯槽骨, 中央側歯槽骨および頬側歯槽骨に至るまで観察した.対照群に比べカルシウム欠乏食群は一般に歯根膜の不規則化, 骨小腔の減少, ハバース系の減少が著明で骨基質形成は低下していた.低カルシウム食群は, カルシウム欠乏食群に比ベハバース系の増加および骨の再構築層が増加していたが, 対照群に比べると骨の回復所見は不十分であった.5. 走査型電顕学的所見対照群に比べ形態的には何ら変化はみられなかった.対照群に比べカルシウム欠乏食群は骨吸収のため露出した大小の骨小腔が多く, 不定形を呈していた.また, 周囲基質との境界が不明瞭な部分も増加していた.カルシウム欠乏食群に比べ, 低カルシウム食群は, 一定方向に走行するコラーゲン原線維束によって骨小腔は囲まれ分布量も増加していたが, 骨吸収面は, 対照群と比べ増加していた.以上の結果から, 小児期の中でも特に低年齢児である幼児期での虚弱下顎骨はバランスのとれた食餌療法では骨基質形成が困難であることから, カルシウム療法と生理活性物質との併用療法を長期間継続する必要があることが示唆された.
- 九州歯科学会の論文
- 1999-06-25
著者
-
牧 憲司
九州歯科大学健康促進科学専攻・機能育成制御学講座・口腔機能発達学分野
-
牧 憲司
九州歯科大学健康促進科学専攻機能育成制御学講座口腔機能発達学分野
-
張 祖燕
九州歯科大学小児歯科学講座
-
中島 龍市
九州歯科大学小児歯科学講座
-
戴 文瑜
九州歯科大学小児歯科学講座
-
Nishioka Takahiro
九州歯科大学小児歯科学講座
-
戴 文瑜
大学院歯学研究科
-
張 祖燕
北京大学口腔医学院放射線学講座
-
Nishioka Takahiro
Advanced Technology R & D Center Mitsubishi Electric Corporation
-
牧 憲司
九州歯科大学健康促進学専攻機能育成制御学講座
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