摂食障害におけるトランスジェニックマウスを用いた研究の可能性
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概要
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心身医学の疾患, 例えば摂食障害において, 患者血中および脳脊髄液中の脳腸管ペプチド濃度に異常を生ずることはよく知られている. しかし, この変化が病態形成に一義的な意義を有しているのか, 二次的な変化なのかは明らかでないことが多い. 1つの検討手段は, ペプチド遺伝子を過剰に発現させたり欠落させたりするトランスジェニックマウスを作製し, その表現型を解析することである. 例えば, 強力な摂食促進系ペプチドであり, 摂食障害患者の脳脊髄液中の上昇が認められる神経ペプチドY(NPY)過剰発現マウスは, コルチコトロピン放出因子(CRF)を介して不安行動を発現させた. また, アンフェタミンの食欲抑制作用に抵抗性を示し, ショ糖負荷によりコントロールマウスに比して有意の摂食量および体重増加が認められた. このように, NPYを軽度に過剰発現するマウスは摂食抑制物質に対し耐性を示し, 美味な食餌負荷により摂食行動, 体脂肪量蓄積を促進させた. このことは, 遺伝因子と環境因子の相互作用こそが病態形成に重要であり, トランスジエニックマウスを用いた検討は摂食障害をはじめ, 食行動や情動に異常をきたす病態を解析するうえで有用と思われる.
- 日本心身医学会の論文
- 2004-11-01
著者
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