リポカリン型および造血器型プロスタグランジンD合成酵素の機能解析
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概要
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プロスタグランジン(PG)D2は,末梢組織の肥満細胞やTh2リンパ球で産生されアレルギー反応のメディエーターとして働く.一方,中枢神経系の主要PGとしても産生され,睡眠や痛覚の調節を行う.PGD合成酵素は,PG類の共通中間体であるPGH2からPGD2への異性化を触媒し,肥満細胞やTh2リンパ球に分布する造血器型と,中枢神経系や雄性生殖器,心臓に局在するリポカリン型の2種類が存在する.マウスとヒトの両酵素のcDNAがクローニングされ,造血器型酵素はシグマ型のグルタチオン転移酵素の遺伝子ファミリーに属し,リポカリン型酵素は脂溶性低分子化合物の結合と輸送を行う分泌タンパク質により構成されるリポカリン遺伝子ファミリーに属する初めての酵素であることが証明された.両酵素のアミノ酸配列には全く相同性が見られず,異なる起源から進化してPGD合成酵素活性を獲得した機能的相似の新しい例と考えられる.さらに,ヒト脳脊髄液の主要タンパク質として1961年に発見されたベータ·トレース(β-trace)がリポカリン型PGD合成酵素であることも証明され,脳脊髄液や尿,精液,血液等の各種体液中の本酵素濃度が,脳内出血や腎疾患,稀精子症,冠動脈狭窄等の疾患マーカーとして有効であることが証明された.そして,それぞれの酵素の遺伝子欠損マウスとヒト型酵素を大量発現するトランスジェニックマウスが作製され,アレルギーや痛覚,睡眠調節の異常を示すことが証明された.さらに,ラットとヒトの造血器型酵素およびマウスのリポカリン型酵素のX線結晶構造が決定され,両酵素に特異的な阻害薬との複合体の構造解析も進んでいる.それぞれのPGD合成酵素で産生されたPGD2は,DPとCRTH2の2種類の受容体に作用して,様々な生理機能に関与すると考えられる.
- 2004-01-01
著者
-
江口 直美
大阪バイオサイエンス研究所
-
裏出 良博
(財)大阪バイオサイエンス研究所
-
有竹 浩介
(財)大阪バイオサイエンス研究所
-
江口 直美
(財)大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門
-
早石 修
(財)大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門
-
江口 直美
大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学 部門
-
裏出 良博
大阪バイオサイエンス研究所分子行動生物学
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