死体肺移植における一酸化窒素吸入(NO)の有効性と至適投与時間についての実験的検討 : 岡山大学医学賞(砂田賞)を受賞して
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概要
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肺移植の普及と共に,ドナー不足は深刻な問題となっています.もし心停止ドナーからの肺の使用が可能ならば,ドナーの増加に大きく寄与するものと思われます.しかしながら死体肺移植に関しては,温阻血時間に伴う術後早期の移植肺機能不全が,大きな問題になると予想されます.今回私達は,死体肺移植において,温阻血時間の延長及び呼吸機能の改善に対する一酸化窒素(NO)吸入の有効性と,更にその至適投与時間についての実験的検討を行いました.雑種成犬を用い,ドナーをヘパリン化することなく,心停止後3時間室温にて放置の後,左片肺移植を行いました.移植後対側肺動脈及び気管支を結紮し,移植肺機能を6時間評価しました.100%酸素換気下に,再潅流直前より評価終了時までNO40ppmを持続吸入した群(group 1, n=6),評価開始後1時間までNO40ppmを持続吸入,以後終了時まで,Saturationを一致させるために,窒素40ppmを同じく持続吸入した群(group 2, n=6)及び,再潅流直前より評価終了時まで,窒素を持続吸入した群(group 3,n=6)とを比較検討しました.生存時間,動脈血酸素分圧(PaO(2)),動脈血二酸化炭素分圧(PaCO(2)),湿乾燥重量比(W/D ratio),気道内の吸引量の結果より,NO吸入により虚血再潅流障害軽減による呼吸機能の改善並びに,肺水腫の抑制が示唆されました.またmyeloperoxidase activity (MPO)の有意な低下と,肺血管抵抗(PVR)の低下が認められました. group 1とgroup 2の間には,これらの結果について特に有意な差は認めませんでした.従って,NO吸入が,死体肺移植において,温阻血時間の延長及び呼吸機能の改善に対し有効であり,しかも再潅流直前より短期間の吸入で持続吸入と同様の効果が得られるものと思われます.
- 岡山医学会の論文
- 2003-01-31
著者
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清水 信義
岡山大学第二外科
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清水 信義
岡山大学第2外科
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伊達 洋至
岡山大学第二外科
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青江 基
岡山大学第2外科
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安藤 陽夫
岡山大学第2外科
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安藤 陽夫
屋島総合病院外科
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山下 素弘
岡山大学第二外科
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山下 素弘
国立病院四国がんセンター外科
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高嶋 成輝
岡山大学第2外科
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