ES細胞による再生医療と創薬の可能性
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概要
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無制限の増殖能とともにあらゆる種類の細胞種に分化可能な胚性幹細胞(ES細胞)は,これまでノックアウトマウス作成などの基礎研究において使われてきたが,ヒトES細胞の出現によって再生医学研究への応用が期待されている.ヒトES細胞株の樹立は無尽蔵なヒト組織細胞の供給源として医学や創薬研究に利用できるとともに,様々な難治疾患に対する細胞治療の可能性を実現しようとしている.マウスES細胞では,LIF添加によって安定した幹細胞維持と増殖が可能である.しかしながら,霊長類ES細胞の場合はLIF添加の効果はなく,安定に増殖維持するための方法確立が求められている.我々は実験動物として使われるカニクイザルの胚盤胞からES細胞株の樹立に成功した.マウスES細胞と異なる点が多く,安定に未分化幹細胞を維持し増殖させるためには,細かな培養方法の検討が必要であった.その結果,我々の研究室では現在安定したサルES細胞株の継代と増殖が可能になり,1年以上増殖を続けているES細胞株も存在している.このようなサルES細胞は,再生医学を目指した様々な基礎研究に利用されるとともに,疾患モデルサルへの同種異系間の細胞移植治療のモデル系として,前臨床研究の重要なツールになると思われる.今後重要となる研究は,細胞や核の再プログラム化である.これを利用すれば,免疫拒絶を回避できる患者適合型の幹細胞を作り出すことも可能になるはずである.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2002-11-01
著者
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