<論説>19世紀中葉の根室場所におけるアイヌの改名と命名規則の空間的適用範囲
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
文字を持たないアイヌ社会において,近所に生きている人やすでに死亡した人と同じ名を付けないという個人名の命名規則が,どの程度の空間的範囲に生活する人々に適用されていたのかは,これまで不明であった.アイヌ名の命名には,出生後初めての命名と改名による新たな命名があり,いずれもアイヌ固有の文化であったと考えられる.アイヌ名の改名は根室場所,紋別場所,静内場所,三石場所,高島場所,樺太(サハリン)南西部,鵜城で確認された.中でもアイヌ名の改名が最も多く生じていたのは,根室場所であった.根室場所におけるアイヌ名の改名は,結婚や死と関わって生じた事例が多かった.改名による新たな命名が多く生じていたにもかかわらず,同じ名を付けないという個人名の命名規則は,1848-1858(嘉永1-安政5)年の根室場所においては,集落単位のみならず根室場所全域ではぼ遵守されていた.根室場所は,アイヌの風俗の改変率が高いことから和人文化への文化変容が進んだ地域とみなされるが,アイヌ名の命名規則に関する限り,アイヌ文化は受け継がれていたと考えられる.
著者
関連論文
- 狩猟採集民オロチョン社会における定住と農耕開始の萌芽 : 中国の大連図書館・魯迅路分館所蔵の資料を用いて
- アイヌの定住期間からみた集団の空間的流動性 : 1856-1869年の東蝦夷地三石場所を例に
- 大興安嶺におけるオロチョンの集落構成の流動性
- 鄂倫春"集落"(烏力楞)構成規模考 : 従民俗地理学的視角展開
- 狩猟採集民オロチョンの集落の戸数規模
- 狩猟採集民オロチョンの集落研究に向けて
- 1930年代の大興安嶺南東部におけるオロチョンの命名規則 : アイヌとオロチョンの文化に関する比較研究にむけて
- 集団の空間的流動性からみたアイヌ集落の持続的な血縁関係 : 1856-1869(安政3-明治2)年の東蝦夷地三石場所を例に
- 1800年代初期のアイヌの社会構造と命名規則の空間的適用範囲
- 19世紀中葉の根室場所におけるアイヌの改名と命名規則の空間的適用範囲
- 紋別アイヌの家構成員の流動性
- 19世紀のアイヌ社会における和名化の展開過程
- アイヌ集落の空間的流動性と空間占拠の平等性 : 東蝦夷地三石場所を例に
- 狩猟採集社会における集団の空間的流動性の測定に関する一試論 : アイヌとオロチョンの比較
- アイヌの流動的集団の形成過程と血縁関係
- 1800年代初期の択捉島のアイヌ社会における和名化の展開過程
- 1800年代初期のアイヌ社会における命名規則の空間的適用範囲
- アイヌ文化と高校地理教育
- 東蝦夷地静内場所におけるアイヌの命名規則の空間的適用範囲
- カラフトアイヌにおける家構成員の流動性の可能性
- 高校地理教育における狩猟採集民アイヌ
- 根室アイヌの家構成員の流動性 : 本拠地帰還例の分析
- 19世紀中期の東蝦夷地三石場所におけるアイヌ集落の存続期間と血縁親族関係
- 高島アイヌの家構成員の流動性と本拠地帰還例
- 江戸時代の根室アイヌにおける本拠地の固定性の検討
- 紋別アイヌの家構成員の流動性と本拠地帰還例
- 三石アイヌの集団の流動性に関するデータの訂正
- アイヌの移動と居住集団--江戸末期の東蝦夷地を例に