ルイ=ルネ・デ・フォレ『物乞いたち』の語りの構造について
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概要
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11人の登場人物による35の独白からなる『物乞いたち』は、文学作品の形式的側面に対するデ・フォレの強い関心をその出発点において証言するものであり、後のデ・フォレの探究において重要な位置を占めることになる言語と語る主体との両立不可能性という問題をすでに明確なかたちで主題化している。 小論では、作品を以下の三っの語りの形式的特徴を通して分析することによって、伝統的な心理小説とは一線を画すこの小説の現代性を明らかにする。(1)複数の主観による語り。作品は、その主要な主題の一・っである登場人物の「孤独」を、語りの直接的な内容としてではなく、作品の構造によって規定される複数の視点問の不協和を通して表現している。(2)独白の非時系列な配置。時系列に沿った構成を放棄することによってこの作品は、出来事を時間的な発展のなかで描くのではなく、同一・の構造の異なった水準での反復として、宿命的な力の回帰という相の下に提示する。(3)複数の〈語りの現在〉の共存。それぞれの独白は、異なった時点から過去を回顧しており、固有の時間的厚みを持っている。出来事はさまざまな時間的「遠近法」のアマルガムとして提示される。 こうした形式的特徴は、語りの直接的な意味内容を宙吊りにし、語り手の主観的意図を超えた意味作用を生み出す。また言葉は自己を表現するための手段ではなく、しばしばそれを阻む障害物としてたち現れる。この点において、この小説の語り手たちは、もはや心理的存在ではなく、言語とそれを語る存在との相互排他的関係のなかで規定される主体、フーコー的意味における「モダンな」主体であると言える。
著者
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