中国における金属・機械工業の民営中小企業の技術水準 : 遼寧省瀋陽・大連・鞍山・撫順・新閔の実態調査結果報告(<特集>中国経済の変革)

概要

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日中中小企業協力研究プロジェクトの2年目を迎えた本年は,瀋陽市,大連市,撫順市,鞍山市,新閔市の私営・民営中小企業を訪問した.国有企業の私営化・民営化,経営情報,規模,技術水準などについて多くの調査結果を得たが,民営中小企業の動き,中小企業の技術水準に係わる実証的考察,民営中小企業の技術水準に関する事例分析を通して,現在の技術課題や先端技術について深く追究し,新しい知見を得ようとした.ここでは金属・機械工業分野などの民営中小企業における技術水準の調査研究結果を報告するものである.先端技術分野の中に,自動化の課題が入っていた.特大企業では,工場の中に多くの技術者を抱え,国有企業では自動化に対応できる技術はあるといえる.しかしながら,民営化した中小企業の多くは,外国企業から主要な設備の導入を図っており,自前の技術で自動化された製造設備を構築することは困難なように見受けられる."技術はお金で買う"や"他人のものを借りて,自分のものとなす"ということから,現在の経済状態を冷静にみるならば,"技術導入"が"技術開発"に優先するものと思われる.このことは中国の民営中小企業が"市場指向型"であり,製品を販売することを優先しているものと思われる.逆に,日本の中小企業は"技術指向型"であり,生産技術の革新に注力するものの,市場動向にやや疎い傾向が見られる.さらに,中国の民営化された中小企業の董事長は日本の企業とよいパートナーになれると考えている.董事長と社長が真の信頼関係を築くまで,数多く懇談することが合弁・合資企業を成功させる最良の手立てといえる.日本の中小企業の社長,技術者は中国進出に強い関心をもっているものの,はっきりいって技術だけもっていかれることを恐れている.再び民営化から国営化に逆戻りするのではないかと恐れ,全ての投資が無駄にならないかと恐れている.改革・開放後,市場経済へ移行しつつある中国の真の姿をまだまだ把握しきれていない日本の経営者に,何らかの参考になれば,本研究プロジェクトの一つの目的は果たしたものと思われる.
立命館大学の論文
2003-03-30

著者

田中武司
立命館大学

中国における金属・機械工業の民営中小企業の技術水準 : 遼寧省瀋陽・大連・鞍山・撫順・新閔の実態調査結果報告(<特集>中国経済の変革)

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