心肥大の成因確定に苦慮したFabry病の1例
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概要
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症例は, 64歳, 男性. 若年より高血圧を指摘され, 38歳時, 慢性腎不全により血液透析を導入後, 脳死下腎移植を施行された. このころより心肥大, 心電図異常が指摘されていた. 2010年5月ごろより一過性心房細動による動悸を自覚するようになった. β遮断薬により改善したが, 心エコーより大動脈弁狭窄症あるいは肥大型心筋症の進行が疑われ同年11月精査・加療目的にて当科入院となった. 入院時BNP 2,572pg/mL, 胸部X線では左側胸水・肺うっ血を認めた. 心エコー検査では, 全周性に著明な左室壁肥厚, 大動脈弁狭窄を認めた. 心臓カテーテル検査による直接圧較差から求めた大動脈弁口面積は0.83cm2であった. 冠動脈には有意狭窄は認めず, 大動脈弁狭窄症による心不全と診断し心不全治療を開始した. その後, 高度な進行性左室肥大の原因検索のためα-galactosidase A活性を測定したところ異常低値を認め, 心筋生検を施行し心筋細胞内にスフィンゴ糖脂質の蓄積を確認したことからFabry病による心肥大と診断し酵素補充療法を開始した. 心肥大の原因となり得る複数の疾患を合併し診断に苦慮したFabry病の1例を経験した. また, 高度な大動脈弁狭窄症を合併したFabry病はわれわれが検索した限りではなく, 稀有な症例と思われたため報告する.
著者
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湊口 信也
岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環器内科・第二内科
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金森 寛充
岐阜大学医学部附属病院
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川崎 雅規
岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学
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竹村 元三
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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久保田 知希
岐阜大学大学院医学研究科 再生応用学講座 循環病態学分野
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牛越 博昭
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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服部 有博
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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高杉 信寛
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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今井 一
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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青山 琢磨
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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西垣 和彦
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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鈴木 貴史
岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学
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