特定疾患治療研究事業医療受給者の経年変化 受給者調査リンケージデータを用いた解析
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概要
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目的 過去に実施された 4 回の医療受給者全国調査で入手された情報をリンケージし,最長13年間における受給継続状況を,疾患別,性年齢別,医療保険の種類別,都道府県別に明らかにする。また性別・疾患別の受給継続率を推計し,特定疾患治療研究事業対象者の医療受給者証交付継続状況を明らかにする。<br/>方法 1992年度給付対象であった34疾患の受給者について,過去 4 回(1984年度,88年度,92年度,97年度)実施した医療受給者全国調査の各年度のデータを,疾患毎に①性,生年月日と居住地都道府県が一致した場合に同一者とみなす②受給者番号と居住地市町村が年度間で一致した場合は,性,生年月日の年号,年,月と日の 5 つのなかで 4 つが一致すれば同一者とみなすとする方法で個人単位のリンケージを行った。各調査年度に観察された受給者がそれ以降に実施された全国調査の時点でも受給しているか否かで継続状況を区分した。この区分方法で,疾患毎に各年度の受給者のその後 4(または 5), 8(または 9), 13年間の継続率を算出した。さらに,受給継続率の推計値を単年毎に算出し,84, 88, 92年度受給者から得られた単年毎の継続率を平均した平均受給継続率も算出した。<br/>結果 受給者全体では,約70%が 4 年,約55%が 8~9 年受給を継続し,25~30%程度が受給を 4 年以内に中止している。疾患別には,全身性エリテマトーデスやベーチェット病などのいわゆる自己免疫疾患で長期に受給を継続する者の割合が高く,劇症肝炎,アミロイドーシス,筋萎縮性側索硬化症など生命予後の比較的不良な疾患で継続する割合が低い。また男より女の方が長期継続者の割合が高い。<br/> 受給継続率は,受給者全体よりも各調査年度の新規受給者で低く,給付対象となった年度が古い疾患では,男の受給継続率が女よりも低くなっているが,最近給付対象となった疾患では男の方が女よりも高い傾向がある。<br/>結論 過去 4 回の医療受給者調査のリンケージデータを利用することによって,性・年齢別,都道府県別,疾患別,保険の種類別に特定疾患医療受給者の受給継続状況,最長13年後までの受給継続率の特徴を明らかにすることができた。特定疾患に関する医療制度を始めとする医療・保険制度の改革が行われていく中で,これらの社会的な要因によって受給継続状況は変化することが予測され,今後も注意深い観察が必要である。
- 日本公衆衛生学会の論文
著者
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永井 正規
埼玉医科大学公衆衛生学
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太田 晶子
埼玉医科大学 公衆衛生学教室
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永井 正規
埼玉医科大学 公衆衛生学
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渕上 博司
埼玉県健康づくり事業団
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仁科 基子
埼玉医科大学公衆衛生学
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川村 孝
京都大学・保健管理センター
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大野 良之
独立行政法人・労働者健康福祉機構旭労災病院
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柴﨑 智美
埼玉医科大学公衆衛生学
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