ヒト皮膚におけるレクチン結合様式の組織化学的研究 第Ⅰ報 正常皮膚におけるレクチン結合様式の検討
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概要
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正常ヒト皮膚,特に表皮,エックリンおよびアポクリン汗腺,また脂腺における複合糖質糖鎖の性状,分布を調べるために,糖特異性の判明しているConA,WGA,RCA-I,PNA,SBA,DBA,UEA-Iの各レクチンを用い検討を加えた.方法はビオチン化レクチンとアビジン-HRPを用いる間接法によった.表皮では角質層を除くすべての細胞層でConA,WGA,RCA-Iが陽性反応を示こ特にRCA-Iは上部有棘細胞および顆粒細胞の細胞膜に強い陽性反応を示した.一方PNAは有棘細胞,顆粒細胞の主として細胞膜に,SBAは上部有棘細胞,顆粒細胞の主として細胞膜に陽性反応を示した.エックリン汗腺分泌部では表層・基底細胞ともConA,WGA,RCA-Iに陽性反応を示し,特にRCA-Iは表層細胞の細胞質に顧粒状の陽性反応を示した.一方SBA,DBAは基底細胞に強陽性反応を示した.アポクリン汗腺では,分泌部の腺細胞はConA,WGA,RCA-Iで陽性反応を示し,特にRCA-Iは細胞質に顆粒状の陽性反応を示した.またPNAは腺腔に面した細胞膜のみ陽性反応を示した.脂腺ではConA,WGA,RCA-I,PNAおよびSBAが細胞膜,脂肪滴間の細胞質に陽性反応を示した.以上の結果よりヒト表皮では,表皮基底細胞が分裂し,有棘細胞,次いで顆粒細胞へと分化するに従い,形態の変化のみならず細胞の持つ糖鎖も変化していくことが判明した.エックリソ汗腺分泌部では,表層細胞および基底細胞はいずれもその細胞の持つ糖鎖が異なっており,それぞれの糖鎖に特異性を持つレクチンにより両細胞の識別が容易になることが示唆された.またアポクリン汗腺はエックリン汗腺とは異なる糖鎖を持つことが判明した.脂腺では表皮と同様にDBA,UEA-Iを除く今回用いたすべてのレクチンで陽性反応が認められ,両者の持つ複合糖質糖鎖の類似性を示しているものと考えられる.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
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