後天性免疫不全症候群に合併したCMV腸炎における臨床病理学的検討
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概要
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後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome ; 以下,AIDS)は,HIV(human immunodeficiency virus)感染症で引き起こされる細胞性免疫不全の総称であり,日和見感染症や悪性腫瘍などの合併症を来たす。なかでもcytomegalovirus(以下,CMV)は不顕性感染の経過を経て,宿主が免疫不全状態に陥ると多臓器障害に及ぶ場合も少なくない。消化管病変もそのひとつとされるが,AIDSに合併したCMV腸炎における臨床的特徴についての報告は稀である。今回我々は病理組織学的にCMV腸炎と確定診断したAIDS患者7例を対象とし,下部消化管病変における臨床病理学的特徴について検討した。検討項目は1.臨床背景,2.内視鏡像と病変部位,3.生検陽性率と病理組織像の3項目とした。【結果】主訴は水様性下痢が85.7%と最も多かった。また,CD4陽性Tリンパ球数は平均31.4(4~74)/μと全例低値であった。内視鏡像では打ち抜き潰瘍を全例に認め,なかでもBauhin弁上に高率であった(85.7%)。生検組織中に存在した核内封入体は潰瘍底の肉芽組織あるいは潰瘍に隣接した粘膜内の血管内皮細胞や周囲の間質に存在していた。【結語】CD4数の低下を来たしたHIV感染症患者に水様性下痢などの消化器症状が出現した際には積極的に内視鏡を行い,打ち抜き潰瘍がみられた際には潰瘍底もしくは潰瘍辺縁からの生検がCMV腸炎の診断に繋がるものと考えられた。
- Japan Gastroenterological Endoscopy Society Kanto Chapterの論文
Japan Gastroenterological Endoscopy Society Kanto Chapter | 論文
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