血液透析患者における上部消化管疾患,Helicobacter pylori感染の観察
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概要
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血液透析患者の上部消化管疾患,Helicobacter pylori(Hp)感染の特徴を観察し,当内視鏡科患者との比較も行った。その際,両群の検討には年齢,性別あるいは年齢,性別,内視鏡診断をマッチさせた。 透析患者(透析群)では内視鏡科患者(対照群)に比べ胃炎の頻度が高く(透析群 : 82例中36.6%,対照群 : 11.0%,P<0.001),消化性潰瘍のそれが低かった(透析群 : 82例中7.3%,対照群 : 42.7%,P<0.001)。透析群のHp感染率(35例中28.6%)は対照群(71.4%)に比し有意に低値であった(P<0.001)。透析群のHp感染率を透析導入期間別にみると,透析期間の長いものほどHp感染率が低いのみならず,透析導入3カ月未満の患者においても感染率は31.3%と低値を示した。3点生検により採取した切片の慢性炎症スコア平均値をUpdated Sydney systemに基づき観察すると,Hp陽性透析群,対照群間のスコアに相違はみられなかった(各々1.97,1.90)。一方,Hp陰性透析群の慢性炎症スコア(0.81)はHp陰性対照群のそれ(0.30)に比し有意に高く(P=0.001),この値は除菌後症例の慢性炎症スコアに近似していた。Hp陽性透析群,対照群の血清抗HpIgG抗体は全例において陽性であった。Hp陰性透析群の抗HpIgG抗体陽性率はHp陰性対照群のそれに比べ有意に高く(各々58.3%,20.0%,P<0.05),除菌後症例の陽性率に類似していた。これらの成績より,透析患者では慢性腎不全に伴う自然除菌例の存在が示唆された。
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Japan Gastroenterological Endoscopy Society Kanto Chapter | 論文
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