「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」発刊にいたるまで
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概要
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多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia,MEN)は複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成を生じる常染色体優性遺伝性疾患であり,最初の報告は20世紀初頭にさかのぼる。しかし発症病変の組合せをもとにMEN1とMEN2に分類され,疾患概念が確立したのは1960年代後半のことである。両者は特定の,かつ複数の内分泌腫瘍が家族性に発症するという共通点はあるものの,本来は原因の異なる別個の疾患である。内分泌疾患に総じて言えることであるが,いずれも特徴的な病変に乏しく,また多臓器にまたがる複数の病変の確認をもって臨床的に診断が可能となることから,初発病変の診断の際に適切な全身検索がなされないと本症の診断に至ることができない。多くの日本人MEN患者がいまだ適切な診断に至っていない可能性が考えられ,このことは,患者本人のみならず,同様にMENを発症している血縁者,あるいは将来発症する可能性のある血縁者の診断や治療を遅らせることにもなる。内分泌腫瘍を発症した患者のうちどのような患者に対してMENの検索をすべきなのか,またひとたび患者をMENと診断した場合,その後の患者や家族に対する診療や対応はどうあるべきなのか,こうした問題を簡潔に提示した資料はこれまでわが国には存在していなかった。また本症患者を診療する可能性がある診療科は,内分泌内科・外科,脳神経外科,消化器内科・外科,泌尿器科をはじめとしてきわめて多領域にわたり,必ずしも内分泌内科,内分泌外科を専門とする医師とは限らない。このような現状にかんがみ,われわれはわが国のすべてのMEN患者が適切に診断され,かつ現時点で最良と思われる医療を受けることができることを願って多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブックを作成した。本稿では今回金原出版株式会社より上梓された「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」作成の経緯とその行程を紹介する。
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Japan Association of Endocrine Surgeons・Japanese Society of Thyroid Surgery | 論文
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