Topic 19 在宅栄養サポート : 成人患者における在宅経静脈栄養
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概要
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在宅静脈栄養 (home parenteral nutrition; 以下、HPNと略) は特に先進国で施行され、必要な栄養を経腸ないし経口摂取できない患者が適応となる。良性疾患では短腸症候群が80%を占め、5年生存率は75%程度であり基礎疾患、年齢などの要素に影響される。終末期癌患者でも適応となり得るが、予後が短い場合は推奨されない。平均寿命は3ヶ月ぐらいで、疾患の病期や悪性度に依存する。HPNに対するトレーニングやモニタリングは在院ないし在宅でも行われ、正式なガイドラインはないが専任の専門家によるチームが担当し、このような教育および観察はカテーテル関連感染症も含め各種合併症を減少させ、生活の質 (Quality of Life; 以下、QOLと略) の改善に寄与する。HPNにおける代謝的合併症には多くの要因が関連し、発症の頻度も高いが、注意深い観察や専門的知識で解決できることが多い。しかしさらに改善するには腎、骨そして肝臓における合併症の理解を深める必要がある。訪問の間隔は安定した状態の患者なら2~3ヶ月おきで、身体計測や生化学検査を施行する。微量元素、ビタミンや骨密度は6~12ヶ月おきに測定する。静脈のアクセスルートは患者の状態に応じて個別に選択する必要がある。またルート挿入時や挿入後の管理における無菌手技は最も重要な感染症対策である。合併症はESPENガイドラインを参照する。消化管機能不全、静脈栄養 (Perental Nutrition; 以下、PNと略) に起因する肝不全や浸潤性腹腔内類線維腫は小腸移植の絶対的適応であるのに対し、中心静脈カテーテル関連合併症や残存小腸が極端に短い患者に対する予防的ないし対症療法としての小腸移植が適応となるのは限られた症例のみである。慢性消化管機能不全患者で治療開始3ヶ月後でもPNより50%以上離脱できないことが予想される場合、早期に小腸移植などが検討されるべきである。
- 日本静脈経腸栄養学会の論文
日本静脈経腸栄養学会 | 論文
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