消化管手術に伴う身体計測値変動と味覚閾値の関連
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概要
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[目的]著者らは先の研究で、切除を必要とする胃および大腸疾患患者の術前期味覚はともに障害されており、術後は大腸切除患者に比べて胃切除患者の味覚認知は減退し回復が遅延していたことを報告した。この結果を踏まえ今回は、手術術式別にみた手術侵襲度をはじめ各種評価指標との関連を検討した。[対象及び方法] 消化管手術患者20名 (大腸切除9, 胃切除11) における術前術後の計3回に測定した味覚 (甘、塩、酸、苦の検知閾値・認知閾値) と両切除群における侵襲度指標としてのSIRスコア、窒素出納、身体計測ならびに投与・摂取栄養量との関連を検討した。[結果] 胃切除群では大腸切除群に比べて、手術侵襲は高度であり、術後は負の窒素出納を呈し身体減少は多量であり、体蛋白の異化が亢進していた。胃切除群味覚閾値は、これら窒素出納と負の相関、身体減少量と正相関を示し、蛋白異化の亢進と身体計測値の低下に比例して味覚は鈍くなった。他方、胃切除群の術後認知閾値は手術侵襲後の代謝転換期以降の窒素出納の正負および栄養量の多寡に影響されており、窒素出納が負であった群の認知閾値は異常値を呈し、正であった群の味の認知は正常に転じた。[結論] 胃・大腸切除における術後の味覚認知減退および回復遅延は体蛋白崩壊の大きさならびに手術侵襲度と連動していた。術後の味覚を正常に保つためには手術侵襲をより軽減し、体蛋白の異化を最小限に止めるための術前術後の栄養管理が重要であることが示唆された。
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日本静脈経腸栄養学会 | 論文
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