Clinical Significance of Overexpression of ras p21 protein in Patients with Colorectal Carcinoma
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概要
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ヒト悪性腫瘍にしばしば見い出される癌遺伝子,ras oncogene p21の大腸癌における出現率を検討し,大腸癌症例において従来用いられている臨床病理学的諸因子との相関,および予後との関連を検討した.[対象と方法]1988年11月から90年1月までの期間に三重大学医学部附属病院第二外科にて切除された結腸癌31例,直腸癌35例の計66症例について検討した.男42例,女24例で,年齢は20歳から87歳,平均63歳であった.病期は,Astler-Coller分類,AおよびB19例,B226例,C1およびC221例,Dが10例で,組織型は高分化型腺癌43例,中分化型22例,低分化型は1例のみであった.手術は54例に治癒切除がなされたが,他の12例は非治癒切除に終わった.検体は,手術にて切除された癌組織と腫瘍から少なくとも10cm以上離れた正常大腸粘膜から採取し,ただちにOCT compound(Division of Miles Laboratories, Inc. Naperville, IL, USA)にて包埋,液体窒素で瞬間凍結した後マイナス80°Cにて保存,必要に応じて研究に供した.ras oncogene p21の免疫組織学的染色には,抗ラットIgG用ABCキット(Vector Laboratories, Inc, Burlingame, CA, USA)を用い,一次抗体には,抗V-H-ras p21モノクロナール抗体Y13-259(Oncogene Science, Inc. Manhasset, NY, USA, Lot No. 16880101)を用いた.凍結標本を室温に30分置いたあと,PBS(Flow Laboratories, UK)にて5分間3回洗浄後アセトンにて10分間固定し,再度PBSにて洗浄した.ついで正常ウサギ血清を20分間反応させたあと,一次抗体を2時間,二次抗体を30分間反応させたあと,PBSにて3回洗浄,ABC溶液を加え30分間反応させた.PBSにて3回洗浄後ペルオキシダーゼを反応させて発色,水洗後Meyerヘマトキシリンにて対比染色を行った.ras oncogene p21発現の判定は,正常粘膜では,腺管構成上皮細胞全体が染色されたものを陽性とし,染色の弱いもの以下を陰性とした.癌においては,腫瘍全域が染色されたものを陽性,染色されなかったものや周辺平滑筋組織の染色よりも弱いものは陰性とした.これらの判定は2人,ときに3人の検者が行った.[結果]p-21の発現率は,大腸癌50%,正常大腸粘膜9%と有意に大腸癌が高かった.臨床病理学的諸因子との関連においては,年齢,性,腫瘍の局在,リンパ節転移の有無,病期等とは相関なく,手術の治癒度,術後再発,および予後との相関も認められなかった.以上の結果より,ras oncogene p21は,大腸癌の発生過程においてなんらかの役割を有すると考えられるが,予後を左右するものではないことが示唆された.
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日本癌病態治療研究会 | 論文
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