低速陽電子短パルス化装置を用いた表面自由体積の研究

概要

論文の詳細を見る
陽電子消滅寿命測定法では, 陽電子を樹脂に入射させ, 陽電子の寿命とその成分の強度を測定している。高分子中では, 数ナノ秒 (ns) の長寿命を持つポジトロニウム (Ps) が形成され, この寿命から樹脂の空隙の大きさを推定することが可能である。強度は高分子の電気・化学特性や, 構造, 空隙の量に関係した量である。本報告では, 低速陽電子短パルス化装置を用いて陽電子消滅の実験を行なった。この装置を用いると, 陽電子の入射エネルギーを変えることができるため, 樹脂表面近傍から任意の深さにおける陽電子消滅寿命を測定することができる。このような測定は, 主に金属系で行われてきたが, 高分子では熱可塑樹脂と熱硬化性樹脂の構造の単純な系に用いられている。本報告では汎用製品として使われているエポキシ樹脂/フェノール系硬化物にこの装置を用いた。測定結果から, 表面近傍から樹脂内部へ空隙の大きさが傾斜構造を持ち, 樹脂内部と表面の物性とは異なることが予測される結果を得た。
Japan Thermosetting Plastics Industry Associationの論文