慢性B型肝炎治療薬adefovirにより生じた薬剤性骨軟化症による全身痛の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
薬剤性骨軟化症による全身痛の症例を経験した.原因薬剤はB型肝炎治療薬adefovir dipivoxilと考えられた.肝炎患者に対する同剤の投与で骨軟化症を引き起こした報告はきわめてまれであり,診断に難渋した.42歳,男性.5年前よりB型肝炎にて加療中であった.当科初診9カ月前から両膝痛,両足関節痛,腰背部痛が出現した.膠原病や神経筋疾患などを疑われ,複数科で数カ月にわたり精査をされたが原因不明であり,当科へ紹介となった.薬物療法や硬膜外ブロックなどでは痛みの軽減なく,入院加療を行った.その際の頸椎MRI検査で頸椎棘突起骨折を認めた.血液検査ではアルカリホスファターゼの上昇と血清リンの低下,腎機能障害を認めた.骨塩量も低下しており骨代謝異常を疑った.リンとビタミンDの補充療法を行ったが,症状は不変であった.精査の結果,Fanconi症候群による低リン血症とそれに伴う骨軟化症が疑われた.Fanconi症候群の原因として,adefovir dipivoxilが疑われたため,休薬したところ著明な痛みの改善と骨塩量の上昇を認めた.
- 一般社団法人 日本ペインクリニック学会の論文
著者
-
上村 裕平
佐賀大学医学部附属病院手術部
-
平川 奈緒美
佐賀大学医学部麻酔・蘇生学
-
笹栗 智子
佐賀大学医学部麻酔・蘇生学
-
江口 有一郎
佐賀大学医学部付属病院総合診療部
-
江口 有一郎
佐賀大学医学部肝疾患医療支援学
関連論文
- ペグインターフェロンα2a単独投与中に多型紅斑型薬疹を生じたC型慢性肝炎に対し天然型インターフェロンβ製剤の投与によりウイルス排除が得られた1例
- 漢方薬による頭頚部領域の疼痛治療
- 食道静脈瘤硬化療法施行後に非典型的部位に発症し内視鏡的に治療した非代償性肝硬変合併特発性食道破裂の1例
- 内臓肥満と肝疾患
- 肝生検後35年経過して発症し経カテーテル的肝動脈塞栓術によって門脈圧亢進が著明に改善した肝内動門脈瘻の1例
- 劇症型で発症し, 不幸な転帰をとった遅発型オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の1例
- 先天性無痛無汗症患者のプロポフォール単独による麻酔経験 : 術中の血中カテコラミン値の変化
- ペインクリニック治療指針改訂第二版利用状況アンケート結果
- 経皮的硬膜外腔排膿・洗浄が有効であった硬膜外膿瘍の1症例
- 交感神経の臨床解剖学